教保文庫、10月の月間ベストと注目の新刊(エッセイ)

教保文庫の10月のエッセイ月間ベスト10と注目の新刊情報をご紹介します。順位の変動はありますが、1位から7位までは先月と同じ書籍がランクインしました。注目の新刊では、『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』(牧野美加訳、集英社)の著者ファン・ボルムによるエッセイや、梨泰院で発生した雑踏事故の生存者や遺族らに聞き取りを行ったインタビュー集を紹介しています。

1位: 『오늘도 나아가는 중입니다(今日も前進している途中です)』チョ・ミン(2023.09.19/チャムセチェッパン)
2位:『기분이 태도가 되지 말자(気分が態度にならないように)』キム・スヒョン(ハイスト/2022.11.25)
3位:『불안(不安)』アラン・ド・ボトン/チョン・ヨンモク訳(2012.01.04、初版:2011.12.28/ウネンナム)
4位:『당신은 결국 무엇이든 해내는 사람(君は結局何でもやり遂げる人)』(10万部記念特別リカバーエディション)キム・サンヒョン(Feelm/2022.04.20)
5位:『꽃은 누구에게나 핀다(花は誰にでも咲く)』オ・ウンファン(ブックロマンス/2023.09.19)
6位:『좋은 일이 오려고 그러나 보다(いいことが起こる前触れだよ)』パク・ヨルム(ヒウッ/2023.07.26)
7位:『푸바오, 매일매일 행복해(プーバオ、毎日毎日幸せだよ)』エバーランド動物園(シゴンジュニア/2023.09.20、初版2023.09.10)
8位:『감정은 사라져도 결과는 남는다(感情は消えても結果は残る)』イ・へイン(Feelm/2023.06.15)
9位:『승리의 함성을 다 같이 외쳐라(勝利の喚声を皆で叫べ)』ユン・セホ(クレタ/2023.10.24)
野球マニアで、現在は「スポーツソウル」の記者である著者初の野球エッセイ。首都圏の人気プロ野球チームであるLGツインズは、2002年の準優勝を最後に韓国シリーズから遠ざかり、暗黒時代を経験しました。そんなチームが2023年のペナントレースを制するまでの軌跡を、著者だけが知る秘話とともに振り返ります。
10位:『이 아이는 자라서 이렇게 됩니다(この子は大きくなって、こんなふうになりました)』イ・ヨンハン(2023.10.18)
詩人である著者は、「野良猫の給食所」である「ネコ食堂」を運営していることで知られており、邦訳書『さよなら、猫よ ありがとう』(猫咲スノー訳/ポルケ)も出版されています。本書は、著者がこれまでに出会った猫のうち、1年以上見守ってきた40匹の成長を記録したものです。無事に大人になるだけでも奇跡だと言えるほどの劣悪環境や人間の無関心についても言及されています。

注目の新刊
『10CM 그라데이션(Gradation) (10CMのグラデーション(Gradation))』クォン・ジョンヨル、イラスト:クァク・スジン(オンジェナブックス/2023.10.30)
韓国音楽界のアイコンといわれるシンガーソングライターの10CM(シプセンチ)。本書は、片思いの気持ちを歌った「Gradation」の歌詞をもとに、その世界観をイラストで表現した一冊です。イラストを担当したのは、イタリアのボローニャで開かれた世界初の文字なし絵本コンテスト「Silent Book Contest」において『Costruttori di Stelle(별 만드는 사람들)』(Costruttori di Stelle(星を作る人たち))で一位に輝いたクァク・スジン。この2人のコラボレーションに注目です。

『단순 생활자(単純生活者)』ファン・ボルム(ヨルリムウォン/2023.10.13)
『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』(牧野美加訳、集英社)で知られる著者による新作エッセイです。「よく休んでこそ、よく生きることができる」ことに気づいた著者が、自分の生き方を整えていく過程や、何気ない日々をシンプルに暮らす姿がつづられています。『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』が世に出るまでの話も語られているので、小説と一緒に読むのもおすすめです。

『우리 지금 이태원이야(私たち今、梨泰院だよ)』10・29梨泰院惨事作家記録団(チャンビ/2023.10.29)
昨年10月29日に梨泰院で起きた雑踏事故は、まだ記憶に新しいと思います。本書は、この惨事を哀悼し、記憶するために結成された10・29梨泰院惨事作家記録団(弁護士や活動家、芸術家、息子を持つ母親など、全国各地から集まった市民により構成)が、事故の生存者や遺族らの話を聞き取った初のインタビュー集です。1部「その日、梨泰院では」には、事故当時の現場や事件後に生存者が経験したことに関する話、2部「君に会いにゆく道」には、愛する家族を失った遺族のその後がつづられています。この本の収益の一部は、この事故の犠牲者を悼み、真相を究明するための活動に寄付されるそうです。(文/金知子)