教保文庫、9月の月間ベストと注目の新刊(韓国小説)

教保文庫の2023年9月の月間ベスト10と注目の新刊情報(韓国小説)をご紹介します。1位は『雨が降ると開く店』でした。今年の李箱文学賞大賞を受賞したチェ・ジニョンさんの長編が刊行されたほか、11月のK-BOOKフェスティバルの際の来日が決まっているキム・チョヨプさんの長編も間もなく刊行されます。

1位:『비가 오면 열리는 상점(雨が降ると開く店)』ユ・ヨングァン著(クレイハウス/2023.6.14)
2位:『아주 희미한 빛으로도(ほんのかすかな光でも)』チェ・ウニョン著(文学トンネ/2023.8.7)
3位:『모순(矛盾)』(ハードカバー)梁貴子(ヤン・グィジャ)著(スダ/2013.4.1)
4位:『구의 증명(クの証明)』チェ・ジニョン著(ウネンナム/2023.4.26)
5位:『메리골드 마음 세탁소(マリーゴールド 心の洗濯屋)』ユン・ジョンウン著(ブックロマンス/2023.3.6)
6位:『불편한 편의점(不便なコンビニ)』(40万部記念 桜エディション)キム・ホヨン著(ナムヨップウィジャ/2021.4.20)
7位:『불편한 편의점2(不便なコンビニ)』(紅葉エディション)キム・ホヨン著(ナムヨップウィジャ/2022.8.10)
8位:『아버지의 해방일지(父の解放日誌)』(30万部記念特別エディション)チョン・ジア著(チャンビ/2022.9.2)
9位:『검은 꽃(黒い花)』キム・ヨンハ著(福福書架/2020.7.20)
2003年に初版が刊行された長編小説。東仁文学賞を受賞し、これまでに50刷以上となるほどのロングセラーの改訂版です。刊行から20年を記念し、初版当時のデザインを生かしたカバー(数量限定)でお目見えです。朝鮮王朝末期の1905年、南米に移住した、孤児や王族の娘、破戒神父、退役軍人、泥棒、ムーダンなど朝鮮人1,033人の運命を描きます。著者の邦訳に『阿娘はなぜ』(森本由紀子訳、白帝社)、『光の帝国』(宋美沙訳、二見書房)、『殺人者の記憶法』(吉川凪訳、クオン)があります。
10位:『푸틴을 죽이는 완벽한 방법(プーチンを殺す完璧な方法)』キム・ジンミョン著(イタブックス/2023.9.20)
全世界の人が力を合わせてプーチンの核の脅威に打ち勝たねばならないという信念で書いたという、作家活動30年の記念作。

注目の新刊・近刊は以下のとおりです。
『달의 아이(月の子)』チェ・ユンソク著(フォレストブックス/2023.9.15)
時は2035年、8歳の誕生日を迎えた娘と一緒にスーパームーンを見ようと散歩に出た夫婦。普段より1.27倍大きい状態という月の引力に引き寄せられ、娘が夜空の彼方へと消えてしまいます。“「スズメの戸締まり」に続く韓国発感動ファンタジー”と評される長編です。著者はドラマ「推理の女王2」「キム課長とソ理事」などを演出した監督でもあります。

『나는 지금도 거기 있어(わたしは今もそこにいる)』イム・ソルア著(文学トンネ/2023.9.21)
『最善の人生』(古川綾子訳、光文社)の著者イム・ソルアの8年ぶり、2作目となる長編小説。それぞれ違う道を歩んできた4人の女性の人生を時系列に沿って追いながら、恋人や友人、親に対する、切なくも息詰まるような感情を描き出します。

『단 한 사람(たった一人)』チェ・ジニョン著(ハンギョレ出版社/2023.9.30)
「ホーム・スイート・ホーム」で今年の李箱文学賞大賞を受賞したチェ・ジニョンによる2年ぶり、8作目となる長編小説です。数千年を生きてきた木の力を借りて、死の危機に瀕した数多くの人間の中からたった一人の命を救える力を持つ15歳の主人公。生とは、死とは何か、人は人の救いになり得るのか、といった、著者が長年見つめてきたテーマに「寿命仲介」というファンタジー要素を加味した作品です。

『김승옥문학상 수상작품집(金承鈺文学賞受賞作品集)(2023)』クォン・ヨソンほか著(文学トンネ/2023.10.10)
デビュー10年以上の作家を対象に、1年間でもっとも優れた短篇を選定する金承鈺文学賞。今年の大賞に選ばれたクォン・ヨソンの「クワガタムシ式問答」ほか、優秀作に選ばれたチェ・ジニョン、ソ・ユミ、チェ・ウンミ、ク・ビョンモ、ソン・ボミ、ペク・スリンの作品を収録しています。

『파견자들(派遣者たち)』キム・チョヨプ著(パブリオン/2023.10.13)
人間の精神に異常をきたす「芽胞」が蔓延した地上世界。人々はそれを避け、暗く悪臭のする地下世界で不自由な生活を送っている。そんななか、自身の師のように派遣者となって地上に行くことを目指すテリン。韓国SF界を牽引する著者の新作長編です。著者の邦訳に『わたしたちが光の速さで進めないなら』(カン・バンファ、ユン・ジヨン訳、早川書房)、『地球の果ての温室で』(カン・バンファ訳、早川書房)、『この世界からは出ていくけれど』(カン・バンファ、ユン・ジヨン訳、早川書房)などがあります。11月に開催されるK-BOOKフェスティバルでは小川哲さんとの対談が決定しています。(文/牧野美加)