教保文庫、6月の月間ベストと注目の新刊(韓国小説)

教保文庫の2023年6月の月間ベスト10と注目の新刊情報(韓国小説)をご紹介します。注目の新刊は、邦訳書が多数出版され、日本でも人気のあるキム・ヨンス、チャン・リュジンの新作、そして、出版前から話題沸騰中の『비가 오면 열리는 상점(雨が降ると開く店)』です。

1位:『메리골드 마음 세탁소(マリーゴールド 心のクリーニング屋)』ユン・ジョンウン著(ブックロマンス/2023.3.6)
2位:『풍수전쟁(風水戦争)』キム・ジンミョン著(イタブックス/2023.5.24)
『ムクゲノ花ガ咲キマシタ』(方千秋訳/徳間書店)で知られる著者の2年ぶりとなる小説です。物語は、韓国の大統領宛に送られた謎のメッセージから始まります。メッセージを解読していく過程で見えてきたのは、日本によって矮小化され捏造された歴史や、失われた土地でした。物語を通じて、私たちの未来は過去を失っても存続しうるのだろうか、という問いを読者に投げかけます。
3位;『불편한 편의점(不便なコンビニ)』(40万部記念 桜エディション)キム・ホヨン著(ナムヨップウィジャ/2021.4.20)
4位:『모순(矛盾)』(ハードカバー)梁貴子(ヤン・グィジャ)著(スダ/2013.4.1)
5位:『구의 증명(クの証明)』チェ・ジニョン著(ウネンナム/2015.3.30)
6位:『아버지의 해방일지(父の解放日誌)』チョン・ジア著(チャンビ/2022.9.2)
7位:『불편한 편의점2(不便なコンビニ2)』(紅葉エディション)キム・ホヨン著(ナムヨップウィジャ/2022.8.10)
8位:『2023 제14회 젊은작가상 수상작품집(2023 第14回若い作家賞受賞作品集)』イ・ミサンほか著(文学トンネ/2023.4.5)
9位:『눈부신 안부(まばゆい挨拶)』ペク・スリン著(文学トンネ/2023.5.24)
10位:『각각의 계절(それぞれの季節)』クォン・ヨソン著(文学トンネ/2023.5.7)

注目の新刊は以下のとおりです。
『비가 오면 열리는 상점(雨が降ると開く店)』ユ・ヨングァン著(クレイハウス/2023.6.14)
本作品はまずクラウドファンディングで注目を集め、その後2023年4月のロンドン・ブックフェアでも話題になりました。出版前にもかかわらず、日本をはじめ6か国に版権輸出を実現させたという快挙を成し遂げています。自分の不幸を売ることができる店を中心に繰り広げられる奇想天外なストーリーに、「まるで映画やアニメを見ているかのようだ」と話題の作品です。

『연수(研修)』チャン・リュジン著(チャンビ/2023.6.23)
『仕事の喜びと哀しみ』(牧野美加訳/クオン)、『月まで行こう』(バーチ美和訳/光文社)の著者2冊目となる短編集です。第11回若い作家賞を受賞した「研修」を含め、6編の作品が収められています。ペーパードライバー講習での話やロードバイク同好会での出来事、オリンピック取材記など、多彩な物語が登場します。

『너무나 많은 여름이(あまりにも多くの夏が)』キム・ヨンス著(レジェ/2023.6.26)
本書に収められた短編は、2021年10月から2023年6月までの期間に全国の書店や図書館で開かれた朗読会で紹介され、そのたびに少しずつ修正が加えられていきました。2022年に『이토록 평범한 미래(これほどまでに平凡な未来)』(未邦訳)が出版された後、著者は「変わらねばならないという欲求が強くなると同時に、変わるほかない出来事が起こった」とたびたび語っていました。本書はその時期を経て書かれた短編を集めたもので、著者が「生きていく力を得られる話」を書こうと決意して生み出された作品です。(文/金知子)