教保文庫、4月の月間ベストと注目の新刊(韓国通信)

教保文庫の4月の月間ベスト10(国内小説)と注目の新刊情報をご紹介します。第4回日本翻訳大賞を受賞した『殺人者の記憶法』の著者キム・ヨンハによる9年ぶりの長編小説が、発売と同時に大きな注目を集めています。ブッカー国際賞の最終候補となった『Cursed Bunny(呪いのウサギ)』の改訂版もランクインしています。受賞作は5月26日に発表予定です。

1位:『불편한 편의점(不便なコンビニ)』(40万部記念 桜エディション)キム・ホヨン著(ナムヨップウィジャ/2021.4.20)
2位:『2022 제13회 젊은작가상 수상작품집(2022 第13回若い作家賞受賞作品集)』イム・ソラほか著(文学トンネ/2022.4.8)
3位:『어서 오세요, 휴남동 서점입니다(いらっしゃいませ、ヒュナム洞書店です)』ファン・ボルム著(クレイハウス/2022.1.17)
4位:『저주토끼(呪いのウサギ)』(改訂版)チョン・ボラ著(アジャク/2022.4.1)
5位:『작별인사(別れの挨拶)』キム・ヨンハ著(ポクポクソガ/2022.5.2)
『殺人者の記憶法』(吉川凪訳/クオン)から9年ぶりとなる長編小説。もともと電子書籍プラットフォームの会員用に2020年に限定公開されていた作品に大幅に手を加え、刊行されました。舞台は近未来。平壌にある特殊なエリアで、ヒューマノイドを開発研究する父親と暮らす少年チョリは、ある日突然見知らぬ男に連れ去られ、ヒューマノイドの収容所に連行されます。そこで出会った友人たちと過ごすうちに、それまで自分を人間だと信じて疑わなかったチョリは「もしや自分もヒューマノイドではないか」という疑念を抱きはじめます。「人間を人間たらしめるものは何か」「人間と、人間でないものを分ける境界はどこにあるか」などの問いを投げかける作品です。
6位:『달러구트 꿈 백화점(ダラグート 夢の百貨店)』(100万部記念合本版)イ・ミイェ著(ファクトリーナイン/2021.12.25)
7位:『칵테일, 러브, 좀비(カクテル、ラブ、ゾンビ)』チョ・イェウン著(安全家屋/2020.4.13)
8位:『달러구트 꿈 백화점(ダラグート 夢の百貨店)』イ・ミイェ著(ファクトリーナイン/2020.7.8)
9位:『아몬드(アーモンド)』ソン・ウォンピョン著(チャンビ/2017.3.31)
10位:『지구 끝의 온실(地球の果ての温室)』キム・チョヨプ著(ジャイアントブックス/2021.8.18)

注目の新刊は以下のとおりです。
『마법소녀 은퇴합니다(魔法少女、引退します)』パク・ソリョン著(チャンビ/2022.4.10)
『滞空女 屋根の上のモダンガール』(萩原恵美訳、三一書房)の著者による長編ファンタジー。クレジットカードのリボ払いでいつしか返済できないほどの借金を抱えてしまった「わたし」は、死を決意して漢江の橋の上に立ちます。そのとき「予言の魔法少女」と名乗る女性が現れて「あなたは魔法少女になる運命なのです」と告げます。対テロ作戦に投入されるなど、魔法少女たちが世界を守る時代。「全国魔法少女協同組合」のメンバーから、気候危機による地球滅亡を防ぐ「時間の魔法少女」になる人物だと言われた「わたし」の物語です。

『스마일(スマイル)』キム・ジュンヒョク著(文学と知性社/2022.4.20)
東仁文学賞、金裕貞文学賞、若い作家賞、李孝石文学賞など数々の受賞歴のある著者による小説集です。表題作をはじめ、沈薫文学賞大賞を受賞した「休暇中の死体」など全5編を収録しています。著者の邦訳に『楽器たちの図書館』(波田野節子、吉原育子訳、クオン)、『ゾンビたち』(小西直子訳、論創社)があります。

『애쓰지 않아도(ごく自然に)』チェ・ウニョン著(マウム散策/2022.4.30)
『ショウコの微笑』(吉川凪監修、牧野美加・横本麻矢・小林由起訳、クオン)や『わたしに無害なひと』(古川綾子訳、亜紀書房)が日本でも人気を博しているチェ・ウニョンの短編集。愛と憎しみ、憧れと劣等感、瞬間と永遠がそれぞれ紙一重という世界を生きる女子高校生たちの、繊細な感情を描いた表題作をはじめ、短編14編が収録されています。温もりが感じられるキム・セヒさんの挿画も印象的です。

『책들의 부엌(本たちのキッチン)』キム・ジヘ著(ファクトリーナイン/2022.5.12)
スタートアップ企業を立ち上げ懸命に働いていたユジンは、ある日ふらりと訪ねた地方都市ソヤンリでふと、ブックカフェをオープンしようと決意します。ソウルでの生活に終止符を打ってオープンしたブックカフェ兼ブックステイ「ソヤンリ・ブックスキッチン」を訪れる9人の客の人間模様を描きます。(文/牧野美加)