第25回ソウル国際ブックフェア(韓国通信)

大韓出版文化協会主催の「第25回ソウル国際ブックフェア」が6月19~23日、ソウル市の展示コンベンションセンターCOEXで開催されました。「出現(Arrival)」というテーマで、作家の講演やカンファレンス、図書の展示販売などさまざまなイベントが催されました。会場の様子を一部ご紹介します。

初日の開幕式では、大韓出版文化協会会長、文化体育観光部長官、今年の主賓国ハンガリーの外交部次官補による挨拶に続いて、「本を読むスポーツ選手」キャンペーンの宣布式がありました。このキャンペーンは読書文化の振興を目的に出版界とスポーツ界が協力して行うもので、スポーツ選手たちも読書の大切さを呼びかけます。宣布式では元プロ野球選手のイ・スンヨプさんと元プロサッカー選手のキム・ビョンジさん、作家チョン・ユジョンさんが登壇し、サッカーボールと著書を交換しました。

本を読むスポーツ選手

 

 

 

 

 

 

 

 

午後には「永遠に新しく出現するものたち」というテーマでハン・ガンさんの講演がありました。司会は文学評論家のカン・ジヒさんです。用意された100席はすべて埋まり、立ち見の人も大勢いるほどの盛況ぶりでした。最初の話題はノルウェーの「未来図書館」プロジェクト。2014年にオスロ郊外に植えた1,000本の木を樹齢100年となる2114年に伐採し、その木で作られた紙で各国の作家100人の作品を収めた作品集を出版するというものです。原稿は出版まで公開されません。ハン・ガンさんもその一人に選ばれ、今年5月にオスロを訪れて原稿を寄贈したそうで、その時の様子を写真とともに紹介してくれました。「2114年には私も、現在プロジェクトを運営している関係者もこの世を去っていて、今まだ生まれてもいない人たちが木を伐採し本を出版することになります。そういう『不確実さ』がこのプロジェクトの核心だと考えながら原稿を書きました」と話していました。その他にも、現在、執筆中の作品のこと、子どもの頃からの読書体験など、さまざまな話が出ました。最後に、『흰』(『すべての、白いものたちの』斎藤真理子訳/河出書房新社)の一節をハン・ガンさんが朗読し、静かな熱気に包まれた講演が終わりました。

ハンガン講演1漢江

18、19日には別会場で「交差言語朗読会」があり、小説や詩の外国語訳(日、英、中、仏、露)の朗読と作家本人による韓国語での朗読が披露されました。登壇したのは18日がキム・ボンゴン、チェ・ウニョン、チェ・ジニョン、アン・ヒヨン、19日はキム・ギョンウク、キム・グミ、チャン・ガンミョン、オ・ウンの計8人。19日に参加しましたが、会場は聴衆でぎっしり埋まっていました。それぞれの言語の「音色」や雰囲気まで味わうことのできる貴重な体験でした。

作家のキム・ギョンウクさんが朗読した部分には、登場人物が昔の歌を歌ったり会話したりする場面がありましたが、キムさんが大いに感情移入してその場面を「演じる」と会場は大盛り上がり。その後の質疑応答で、朗読する箇所を選んだ理由を聞かれて「わたしの歌唱力を披露しようと思って」と答えるなど、彼がユーモアたっぷりに話すたびに会場は笑いに包まれました。聴衆からの質問には「作品を書く時、特定の読者を想定しているか。そんな余力はないか」というものもありました。「自分を読者として想定している」(チャン・ガンミョン)、「そんな余力はない」(キム・グミ)、「書き上げるといつも妻にまず読んでもらうので、妻を最初の読者として想定している」(キム・ギョンウク)と答えたのに対し、詩人のオ・ウンさんは「20代、30代の女性を対象にしている。本をよく読む人たちだから」と答え、聴衆の爆笑を誘っていました。チャン・ガンミョンさんが著作『한국이 싫어서(韓国が嫌いで)』について、「韓国のことを書いた本なのに、思いがけずフランスやスイス、日本、中国など外国の若者にも読まれ、それぞれ自国を嫌っているということを知った」と話していたのも印象に残りました。どの作家も気さくに自然体で話す姿には親しみが感じられ、作品を読むだけではわからない、それぞれのお人柄を垣間見ることもできました。

朗読会2朗読会

ブックフェアの期間中、COEXの広大な会場では41カ国の出版社431社(韓国313社、海外118社)がブースを出し、図書を展示販売していました。大手出版社はブースも個性的でした。平日にもかかわらず会場内は大勢の人でにぎわっていましたが、それもそのはず。ブックフェアの入場券を事前予約した人の数は、昨年の2倍の6万人にのぼったそうです。現地で入場券を購入した人も含めると、全体の入場者数はもっと多くなります。韓国の文学や出版に対する関心の高まりが感じられるブックフェアでした。(文・写真/牧野美加 五十嵐真希)

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