昨年末、韓国の主要書店「教保文庫」とインターネット書店「YES24」から相次いで2015年ベストセラーランキングが発表されました。
昨年のベストセラー総合第1位は、日本でも「アドラー心理学」ブームを巻き起こした『미움받을 용기－자유롭고 행복한 삶을 위한 아들러의 가르침』(原題：嫌われる勇気－自己啓発の源流「アドラー」の教え 岸見一郎、古賀史健)。「YES24」では、年間通算40週1位の記録を打ち立てるほどの人気を博しています。ほかに上位を占めているのは、教養知識を一般読者向けに易しく解説した『지적 대화를 위한 넓고 얕은 지식（知的対話のための広く浅い知識）』（チェ・サジャン）シリーズ（『日本語で読みたい韓国の本-おすすめ50選』第4号掲載作品。ちなみに著者名のチェ・サジャンとは「チェ社長」という意味）などの人文学関連図書、『혼자 있는 시간의 힘 』(原題：孤独のチカラ 齋藤孝)、『하버드 새벽 4시 반(ハーバード、午前4時半）』（韦秀英／中国）、『7번 읽기 공부법』（原題：７回読み勉強法 山口真由）など自己啓発関連図書です。 長引く不況や社会不安による影響か、自己実現のための手引書、よりよく生きるためのヒントとなる書籍が読者の心をつかんだようです。
文学分野では『오베라는 남자（オーヴェという男）』(原題：A Man Called Ove フレデリック・バックマン／スウェーデン)、『허즈번드 시크릿（夫の秘密）』(原題：The Husband’s Secret リアン・モリアーティ／オーストラリア)や、マット・デイモン主演の映画『オデッセイ』の原作『마션（火星の人）』（原題：The Martian アンディ・ウィアー／アメリカ）など、海外文学が優勢を占めました。また、『나미야 잡화점의 기적（ナミヤ雑貨店の奇蹟）』(東野圭吾)も「教保文庫」、「YES24」双方の総合ランキングでベスト10入りを果たし、一昨年より人気に拍車がかかっているようです(「教保文庫」総合8位→総合4位 「YES24」総合14位→総合8位、）。
一方、韓国の作家による作品では、韓国臨床美術士の第一人者キム・ソニョンが、癒しと自己実現に効果があるとして選んだ絵画集『그림의 힘（絵の力）』、漢字の起源に隠された歴史をミステリアスな事件と絡めて描き出した長編小説『글자전쟁（文字戦争）』（キム・ジンミョン）、そして『愛のあとにくるもの』（きむ・ふな訳 幻冬舎）、『トガニ―幼き瞳の告発』（蓮池薫訳 新潮社）など、数々の邦訳本もあるコン・ジヨンが、娘への愛情をこめて綴った27の簡単な料理レシピと応援エッセイ集『딸에게 주는 레시피（娘に贈るレシピ）』や、論理的な文章を書くための原則、理論などをわかりやすく解説した『유시민의 글쓰기 특강（ユ・シミンの文章特講）』、若手ファイナンシャルプランナー、ユ・スジンによる財テク手引書『부자언니 부자특강（金もち姉さんの特別講義）』（『日本語で読みたい韓国の本-おすすめ50選』第4号掲載作品）などに人気が集まりました。
また、料理番組ブームの流れから、カリスマ料理人ペク・ジョンウォンによるレシピブック『백종원이 추천하는 집밥 메뉴 52ペク・ジョンウォンのオススメおうちごはん52』も上位にランキングされています。
日本のベストセラーランキングに比べ国際色豊かな内容となっている韓国のランキング。日本書籍の翻訳出版も数多くみられますが、邦訳未刊行の海外書籍も数多くみられ、韓国読者の視野の広さ、知的欲求、探究心の強さが表れています。
