●本書の概略
全国の町の片隅、暗闇で虐待、疎外されている動物たちがいる。彼らにそっと手を差し伸べようとする作家パクソヨンによるエッセイが、本書『生かすということ』である。作者が街角の野良猫や野良犬を愛情もって保護しながら体験した出来事、思いや考えを丁寧に綴った作品である。保護活動を通じて出会った存在、町の片隅で懸命に生きる小さな命を静かに見守る。さらに映画や演劇、小説などの媒体を通じても、動物の生き方に対する自身の考えを語っている。
この本で親しく接する対象には限りがない。ペットとして飼われる一方、人間の身勝手で捨てられる猫や犬、人間の健康や美容のため胆汁をひたすら採取されるクマ、化粧品開発の実験用のウサギから、社会的困難から疎外された人々へと広がっていく。理不尽に苦しめられる動物たちへの共感から、作者の社会的関心がより幅広いものになっていく。猫や熊、うさぎなどから疎外された人にまで寄り添う相手を広げていく物語である。
●目次
はじめに
ここにキャットママがいる
私は動物権の擁護者である
生かす芸術
夏の日の犬たち
再び動物権について
終わりに
推薦の言葉
●日本でのアピールポイント
日本でもペット飼育者のみならず、動物の生存権、虐待防止に関心を寄せる人が増えている。野良猫を地域猫として見守るサクラ猫の運動や、個人的に野良猫や野良犬を保護している人、無慈悲な殺処分を無くそうと運動する人も少なくない。それは動物の命を守ろうとする尊い行為であるが、限界があるのみならず、活動を理解しない人も少なくないのが現状である。
本書では野良猫の給餌場を自ら運営した体験や、活動に対するいやがらせ、猫や他の動物の保護を通じて自身の生活や社会への認識を広げていくことも描いている。
野良猫や野良犬の問題は一筋縄でいかない問題ではある。でも本書によって、動物の存在の在り方が、我々人間にとっても大きな問題であることを認識させてくれる。彼らを支えることは、一方的な義務感だけでできるものではない。支えることによって、支える側も実は勇気や愛を受け取っている一面もあるのである。
韓国での問題と日本の問題は必ずしも同一ではないであろう。でも本書を通して、日本での犬や猫、実験用動物の問題などを顧みると同時に、疎外された隣人へと関心を広げるきっかけにするのは、非常に有意義なことである。これからの人と動物の問題を考えるにおいて、日本でも大いに読まれるべき本だと思われる。
(作成:横田明)

