よりによって本が好きで(하필이 책이 좋아서)

原題
하필이 책이 좋아서
著者
キム・ドンシン、シン・ヨンソン、チョン・セラン
出版日
2024年1月11日
発行元
ブックノマド
ISBN
9791186561874
ページ数
252
定価
18,000ウォン
分野
エッセイ

●本書の概略

編集者出身の小説家、作家やアーティスト活動も行うブックデザイナー、企画広報やMDの仕事を経て、現在はポッドキャスト番組のブックコーナーも担当するライター。そんな本が好きでそれを仕事にした3人が、本にまつわるあれこれを語る。
テーマは多岐にわたり、チョン・セランは推薦文寄稿、改訂版やグッズの作成、審査、講演といった執筆以外の業務や、著者のメディア露出、労働環境、業界の未来と安全性、他業界との共存などの問題についてつづる。キム・ドンシンは、ブックデザインの類型やトレンド、デザイン業界での女性の立ち位置、賞のあり方、契約書の問題などを取り上げ、シン・ヨンソンは、さまざまな職を渡り歩いた経験、フリーランサーとしての生き方、人との出会い、本という商品への思いなどを述べる。

●目次

はじめに
チョン・セラン
キム・ドンシン
シン・ヨンソン

●日本でのアピールポイント

日本にも業界を解説するお仕事本や出版業界に問題提起する書籍はある。本書がこれらの書籍と異なるのは、経歴の違う3人が各自の視点から考えをつづっていることだ。そのため、出版業界のあれこれを知ることができて楽しい本であると同時に、読み終えたあとにはさまざまなことを考えさせられる。なぜなら彼らが問題提起する事柄は、出版業界だけではなく社会全体が抱える問題でもあるからだ。かといって悲観的な話ばかりが続くわけではない。シン・ヨンソンの職を変えながら仕事を続けてきた経験談などは、働きながらも進路に悩む人々に勇気を与えてくれる。
気軽に読み進められるエッセイ形式でありながら、社会問題へ視線を向けさせ、一方でエールも送ってくれる本書は、いま懸命に働いている日本の社会人や進路に迷う若者の心にも響く1冊だと思う。

(作成:諏訪さちこ)

キム・ドンシン
出版社トルベゲでデザイナーとして働き、現在はデザインスタジオ兼出版社のドンシン社を運営。インデックスカードを元にしたシリーズ書籍『インデックスカード インデックス』を、2015年から刊行している。また、18年と19年には「Open Recent Graphic Design」に企画者およびデザイナーとして参加し、23年には、国立現代美術館の企画展示「若い模索2023:美術館のための注釈」にアーティストとして出品。
シン・ヨンソン
フリーの作家。出版社の企画広報部やオンライン書店のMDとして働いてきた。現在はブックコラム、インタビュー記事、コンテンツシナリオなどを執筆する。2017年からはポッドキャスト「Check it out-オ・ウンのみんなで一緒に」の台本も書いている。
チョン・セラン
1984年ソウル生まれ。2010年に雑誌『ファンタスティック』に「ドリーム、ドリーム、ドリーム」を発表してデビュー。13年『アンダー、サンダー、テンダー』(吉川凪訳、クオン、2015)でチャンビ長編小説賞、17年に『フィフティ・ピープル』(斎藤真理子訳、亜紀書房、2018)で韓国日報文学賞を受賞。他にも多くの作品を発表しており、邦訳もされている。