【K-BOOK振興会だより】㊗K-BOOKらじお100回放送となりました!/デモに行くことをテーマにしたエッセイから宇宙人視点で韓国社会を語る小説まで

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K-BOOK振興会便り  2024年6月号        http://k-book.org/
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◆◇今月のTOPIK◇◆

●イベント情報●
6月7日(金):【チェッコリ/会場+オンライン】
「『パラサイト 半地下の家族』を見る7つの視線」出版記念トークイベント——映画ライター、
翻訳者、編集者の3つの視線 ●第二夜 書籍編
ゲスト:月永理絵、廣岡孝弥、アサノタカオ
https://chekccori240607.peatix.com/

6月10日(月):【チェッコリ/会場+オンライン】
クァク・ミンジ×安達茉莉子トークイベント「非婚、そして自分らしく生きることの秘訣を聞いてみよう」
ゲスト:クァク・ミンジ、安達茉莉子
https://chekccori240610.peatix.com/

6月15日(土):【クレヨンハウス/オンライン】
「海を越えて!」
ペク・ヒナさん×長谷川義史さんオンライン講演会
ゲスト:ペク・ヒナ、長谷川義史
https://www.crayonhouse.co.jp/shop/g/g2206090014455/

6月23日(日):【葉々社/会場】
作家・翻訳家と本を語る読書会
姜信子『奥歯を噛みしめる』読書会
ゲスト:姜信子
https://www.instagram.com/p/C7SwQWmyjZj/

◆◇日本語で読みたい韓国の本◇◆

人文 『クォン・ウンジュンの青少年韓国史特講-食べ物で学ぶ韓国の歴史
    (권은중의 청소년 한국사 특강 -음식으로 배우는 우리 역사)』
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●身近な食べ物を通じて知る韓国の歴史

「唐辛子が大好き過ぎて、唐辛子にコチュジャンをつけて食べる国」とまで言われる韓国で、唐辛子の利用が広まったのは17世紀。
豊臣秀吉の朝鮮出兵や清の侵略により疲弊し民衆の貧困化が進んだ時期だ。高価な塩の代わりに、畑で採れる唐辛子の利用が広まったという。
さかのぼって13世紀、日本は蒙古襲来を撃退したが、高麗はモンゴルの侵略を受け、同時に遊牧民族の肉食文化を受け入れた。
しかし仏教の影響が強かったので大っぴらな肉食はためらわれ、肉の具材を包み隠すようにしてマンドゥ(餃子)が生まれたとか。
この他、米、茶、人参など食べ物を通じて韓国史を読み解いていく。誰もが口にする食べ物という視点は同時に民衆の視点でもある。
貧しさの中でも子どもにお腹いっぱい食べさせたい母たちが山菜、野草を工夫して使いナムル料理を生んだ。
朝鮮時代は儒教が支配的で厳しい身分制社会だったが、少しでも暮らしを良くしたいと願う民衆の抵抗が歴史を少なからず動かしてきたこともわかる。
「10代のための人文学特講シリーズ」の一冊だが、広く一般の読者にも勧めたい。

http://k-book.org/yomitai/240507/

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エッセイ 『とりあえず、デモ-“デモに行く”(아무튼, 데모 – “데모하러 간다”)』
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●デモをテーマにしたチョン・ボラのエッセイ集

『呪いのウサギ』(原題)が英ブッカー賞の最終候補に選ばれた作家チョン・ボラの初エッセイ。テーマはデモ。
セウォル号追悼と沈没真相要求、性的マイノリティーの人権保障、非正規労働者不当解雇糾弾と復職要求、差別禁止法制制定のほか、
犯罪容疑者を中国へ送ることを可能にした「逃亡犯条例」を巡る署名活動、ロシアによるウクライナ侵攻やイスラエルのガザ地区侵攻停止要求。
十年間にわたり数多くのデモや集会に積極的に参加し、スローガンを叫び、署名を集めてきた。本書ではデモを通して虐げられた人々の声に耳を傾け、
ユートピアの実現に向けて活動する作家の思いがつづられている。さらにデモや集会での大音響から耳を守るために必需品の耳栓は
「3Mのオレンジ色が最高」などデモに参加する際の必需品も紹介する。

http://k-book.org/yomitai/240513/

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自己啓発 『魔女の条件 ~心に決めたとおり生きることに不慣れなあなたへ~
(마녀의 조건 ~마음먹은 대로 사는 게 아직 서툰 당신에게~)』
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●心に決めたとおりに生きるための自己啓発本

本書での「魔女」とは「心に決めたとおりに生きる女性(マウムモグンデロ サヌン ニョ」を指す。毎日の習慣の積み重ねがその人そのものを作っていく。
なりたい自分を明確にしアップデートしながら自分に適した習慣を続けることが、心に決めたとおりに生きる「魔女」だ。
理想とするものがあっても、実現に向けた日々の努力習慣が長続きしなかったことは誰にでも経験があるだろう。
習慣はたった一日で身につくものではない。また、習慣化の方法に正解もない。始めるのにちょうど良いタイミングはなく思い立った時こそが始める時なのだ。
習慣化のための具体的な手法はもちろん、うまくいかなかった時の対処方法、実行している習慣が自分に合っているかどうか定期的にチェックすること、
刺激を得るため同じ目標を持つ人に会うことなど、習慣を自分のものにするためのノウハウが詰め込まれている。

http://k-book.org/yomitai/240520/

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長編小説『この星が気に入った(이 별이 마음에 들어)』
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●韓国に不時着した宇宙人の視点で語る韓国社会の変遷。秀林文学賞受賞作

宇宙を飛行中に1978年のソウルに不時着した宇宙人ニナ。劣悪な環境に置かれていた縫製工場で働く女性に姿を変え、一瞬にして仕事をマスターする。
ニナには、感情に振り回され、日に何度も食事を必要とする地球人の暮らしは非効率極まりなく映る。
最低限の人権も保障されないような環境で必死に生きる地球人との濃密な2年間で、ニナには愛情など様々な感情が芽生え、本当の人間のようになっていく。
労働者たちも立ち上がり、労働運動へと発展する。闘争現場で制圧される寸前、ニナは高所から飛び降り、舞台は2024年へ。
姿を消したニナの家で一堂に会するかつての女工たち。決して裕福ではないが、そこにはそれぞれが手に入れた人生と笑顔がある。
そして、ニナの子どもが生きる2034年へ。過去と未来、そして現在という時間軸のなかで、めまぐるしく変化していく韓国社会の実情を、宇宙人の視点で綴る斬新な作品。
社会問題とSFというかけ離れた要素がうまく調和され、読み物としての面白さを引き立てている。

https://k-book.org/yomitai/240422/

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◆◇日本語で読める韓国の本◇◆

『仕事帰りの心 私が私らしく働き続けるために』( イ・ダヘ /著、オ・ヨンア/訳、かんき出版)
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「限りある一日の時間の中で「仕事」の占める割合はかなりのボリュームです。起きている間の半分以上は「仕事」をしているわけですから、
そこでのありとあらゆる出来事は自分自身の感情にも大きく影響してきます。
著者イ・ダへさん自身も長年「仕事」をしてきた中で感じたことをストレートに綴った本作は、韓国の働く女性に大きな共感を生みました。
いくつかの心の残った言葉に、「フィードバックとおせっかいは紙一重」(←うんうん、そうなんだ)、
「かかさず集中する1時間をつくるために努力するのです」(←自分で時間を作るということね)、他にもたくさんの言葉に大きく頷きながら読み進めましたが、
中でもプロローグにあった「できることならこの先長く「一緒に」働きたいと思ってもらえる人でありたいと思うようになりました。」は、
まさに私自身の思いを代弁してもらっているようでした。みなさんの胸に響く言葉を見つけ出してみませんか。
訳者のオ・ヨンアさんから推薦のメッセージを頂戴しました。

http://k-book.org/yomeru/240509/

『わたしたちの心をつなぐ ふつうのことばたち』(キム・イナ /著、たなともこ/訳、イースト・プレス)
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IVE、IU、SHINeeなど多数のアーティストの作詞を手掛けた、キム・イナさんによる「言葉」についてやさしく語り掛けてくるように綴られたエッセイです。
中でも「対話」について書かれた中にあった“多くの人が「よい対話」のための話法や話し方を学びたがる。
しかし、対話の真髄は「相手の心をどうしたらきちんと探れるか」にある”の言葉にハッとさせられました。
私たちが普段何気なく毎日行っている行動にもこうした解釈を与えてくれることで、新たな向き合い方ができる、そんな気持ちになりました。
目次の中から気になる言葉を選び出し読み進めることをおすすめします。それがまさに今、皆さん自身が求めていることなのだと思うのです。
訳者のたなともこさんから推薦のコメントをいただきました。

http://k-book.org/yomeru/240529/

◆◇ 韓国の出版・本屋事情 ◇◆

教保文庫、4月の月間ベストと注目の新刊(韓国小説)
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世界的に権威のあるブッカー国際賞の最終候補に選ばれて話題を呼んでいるファン・ソギョンの『철도원 삼대(鉄道員三代)』が3位にランクインしました。
『불편한 편의점(不便なコンビニ)』の作者キム・ホヨンの新作小説『私のドンキホーテ』が刊行され、こちらも注目です。

http://k-book.org/publishing/2024050602/

教保文庫、4月の月間ベストと注目の新刊(エッセイ)
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映画『ソウォン/願い』『トンネル 闇に鎖(とざ)された男』の原作作家、ソ・ジェウォンのエッセイが9位にランクインしました。
注目の新刊では、アニメ『ワンピース』のサボ役を担う声優ナム・ドヒョンのエッセイを紹介しました。

http://k-book.org/publishing/20240506/

◆◇4月のK-BOOKらじお◇◆

♯96 傷ついたことも自分の一部だからあえて残したい、という登場人物に心動かされる『マリーゴールド町 心の洗濯屋さん』
-藤田麗子さん(翻訳者)|わたし、これ訳しました
https://k-book.org/news/radio_96/

♯97 ミステリ好きにはたまらないミステリー小説専門書店|ソ・ハナの韓国の本、ウロウロてくてく
http://k-book.org/news/radio_97/

♯98 料理を作っている人たちの様子が見えてくるガイドブックができました -なかしましほさん(料理家) |わたし、これ担当しました
http://k-book.org/news/radio_98/

♯99 スタッフ間でも話題だった『私の最高の彼氏とその彼女』はタイトル以上のパンチがある小説 -近江菜々子さん(紀伊国屋書店新宿店)|わたし、これ推してます
https://k-book.org/news/radio_99/

♯100 私たちの推し本、そしてそれぞれが考える韓国文学の魅力∣K-BOOKらじお100回記念リスナー読書会
http://k-book.org/news/radio_100/
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韓国の本=K-BOOKを愛する皆さんに、日本で刊行された翻訳本の新刊情報やイベント情報、韓国現地からの情報、
そして読者の皆さんの声をご紹介するインターネットラジオ「K-BOOKらじお」は、Apple Podcast、Spotify、YouTubeで毎週金曜日 朝9時配信中!
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__おしまいに____________________
斎藤真理子さんの訳で『翼 李箱作品集』が出版されて話題となった光文社古典新訳文庫から、李人稙の『血の涙』が波田野節子さんの訳で出版されます。
「朝鮮最初の小説家」と称される李人稙。必読の作品です。6月11日発売予定。
(運営委員:五十嵐真希)

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発行:一般社団法人 K-BOOK振興会

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