●本書の概略
ありきたりで日常的な単語と、人間と動物の立場が入れ替わったイラストが描かれている。人間が主体ではなく、動物のように受動的な存在として描かれる。絵本のタイトルのように「不思議の国」では当たり前の絵が、見るものを挑発する。常識的な単語の解釈とは異なり、不穏なイラストは、人間中心の思考を鋭く皮肉り、私たち人間に質問を投げかける。「私たちは本当に友だちなのか?」「私を見て楽しい?」
●目次
散策/狩り/観察力/動物園/訓練/栄光/余暇/平穏/公園/研究/共感/知識/生物学/ペット/別れ/省察
●あらすじ
「散策」余裕を楽しみながらゆっくりと歩くこと。同行者が先に歩いていく時はリードを引っ張って距離を調節する。
「狩り」昔は肉を手に入れるために行われていたが、今は単純な楽しみのための遊び。
「観察力」小さなことも注意して見る能力。近くでじっくりと観察するほど、深く理解できる。
「動物園」動物の生態と習慣を学び、共感を通して情緒を純化させる場所。
「訓練」基本動作を習得、繰り返し練習すること。あめとムチを効果的に利用する。
「栄光」最高の地位に昇りつめ、名前を高めること。
●日本でのアピールポイント
表紙にはライフルを持ったウサギが描かれ、一見すると子ども向け絵本のようにも見える。表紙をめくれば、その予想は裏切られる。鎖につながれ、おりに閉じ込められているのは、動物ではなく人間だ。ページをめくるたびに戸惑いと不快感は大きくなるかもしれない。それは人の心に潜む邪悪さや世の中の矛盾が描かれているからかもしれない。
この作品は、動物と人間の逆転関係から、立場を変えれば見える景色が変わることを教えてくれる。そういう意味では子どもだけでなく、大人が読んでも感がさせられる点が多く、大人向けの絵本として受け入れられると思う。
作成:砂上麻子