●本書の概略
昔々、人々から忘れられた深い深い魔法の森に、魔法使いのロコと仔犬のポポが幸せに暮らしていた。ロコとポポは、幼い頃から一緒に育って大きくなった。けれども、犬のポポはロコより早く歳を取り、ある日、ロコを遺して死んでしまう。ロコは深い霧のような悲しみに覆われ、魔法の力を失ってしまった。そこで魔法の力を取り戻すため、ロコは旅に出る。旅の途中で、花の妖精や熊のぬいぐるみ、年老いた龍に出会い、魔法の力を取り戻すにはどうすればいいのかヒントをもらっていく。最後にたどり着いた光の森でロコが見たものは……。森の木々にかかっている光の玉の中には、ポポとの幸せな思い出が詰まっていたのだ。幸せだったポポとの記憶をよみがえらせたロコは、深い悲しみから立ち直り魔法の力を取り戻した。
さぁ、うちに帰ろう、ポポ!
●日本でのアピールポイント
新型コロナウイルスにより、今までに想像したこともないような状況に置かれた私たち。別れの覚悟もできないままに、あっけなく別れなければならなかった人々。愛する人の最期にも立ち会えなかった人々。多くの別れがあっただろう。もう二度と会えなくなった人に対しての後悔が残っている人もいるかもしれない。人間だけではなく、飼っていた猫や犬を亡くして、深い悲しみに暮れている人もいるだろう。作家は「悲しみに浸っている人々に、『たくさん愛してちゃんと悲しめば、永遠に憶えていることもできるのだ』ということを伝えたくて、この絵本を書いた」と話している。私たちはこの絵本を通して愛するものの死と向き合い、深い悲しみに塞がれてしまった心を癒し、再び歩き出す力を得られるに違いない。また、「死」と「別れ」について、子どもたちと話をするきっかけにもなるだろう。
作成:田野倉佐和子