━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
K-BOOK振興会便り 2025年5月号 http://k-book.org/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆◇今月のTOPIK◇◆
●フェア情報●
5月9日(金)-11日(日)
딩동 – 韓国文化市場 –
東京・下北沢BONUS TRACK ギャラリー/広場/キッチンにて
トークイベントやマルシェ(韓国のZINE販売など)が開催されます。
詳細は ⇒ https://note.com/bonustrack_skz/n/nba4a0aca8120
●イベント情報●
5月15日(木):【チェッコリ/会場+オンライン】
多様性絵本『ドロシーマンション』作者来日記念「カヒジさんが描く描くカラフルな世界」
ゲスト:カヒジ、加藤慧(オンラインゲスト)
https://chekccori250515.peatix.com/
5月16日(金):【津田塾大学 千駄ヶ谷キャンパス/会場】
国際シンポジウム「混迷の時代を生きる ~韓国現代作家の眼差し」
登壇:キム・ヨンス氏、ウ・ダヨン氏
モデレーター 平野啓一郎氏
※韓国語から日本語への通訳が入ります
https://japanpen.or.jp/konmei/
5月20日(火):【チェッコリ/オンライン】
「日本語で読みたい韓国の本 翻訳コンクール」を語る会―第7回課題作『夏にあたしたちが食べるもの』編
ゲスト:最優秀賞/金子博昭、審査員メンバー/古川綾子
https://peatix.com/event/4344031/
5月28日(水):【チェッコリ/会場】
チェッコリ読書クラブ:テーマ本は『偶像の涙』(全商国 著、金子博昭 訳)
モデレータ:竹田信弥
https://chekccori250528.peatix.com/
◆◇日本語で読みたい韓国の本◇◆
エッセイ 『軽い告白(가벼운 고백)』
―――――――――――――――――――――――――――
●エッセイスト、キム・ヨンミンの短文エッセイ集。
最も短いものは1行。2007年から2024年までの17年の間に書き留めた中から365編を選んで収録した。
格言のように語られる言葉、身近なものについての感想、日記などがすっきりとした短文にまとめられている。
文章は短いが感情や考えはたっぷり詰まっている。人生や日々の出来事について鋭く深く考察していて、
哲学的でもあるが笑いもあり堅苦しくはない。
1部の「心がとどまるところ」では、生き方について問い、感情について考察している。
2部の「頭がとどまるところ」では学ぶこと、教えること、大学について、
3部の「感覚がとどまるところ」では、映画、美術、マンガ、文学など芸術全般と、旅行について書かれている。
カバーの絵はイラストレーター安西水丸の『青りんご』で、カバーを外すと青りんご色の表紙に、
題名と『青りんご』が金で箔押ししてある。しおりも光沢のある青りんご色だ。
https://k-book.org/yomitai/250414/
--------------------
エッセイ 『読書厨房~火と包丁の間で温かい本を読む~ (독서 주방 – 불과 칼 사이에서 따뜻한 책읽기)』
―――――――――――――――――――――――――――
●ウェスティン朝鮮ソウルの総料理長ユ・ジェドクのエッセイ
仕事の合間に読んだ本39冊を紹介する。このうち10冊が日本の書籍であり、日本からもインスピレーションを受けている点が興味深い。
韓国料理にも欠かせない唐辛子と人生を紐づけ、人生も均衡と調和なくしては成り立たないと述べたり、演奏と照らし合わせ、
料理も音楽も偶然が生み出す芸術的要素があると表現したり、そこには、ホテルのシェフならではの目線や感性がある。
著者は読書を通して、初心を忘れない大切さを悟り、どんなシェフとして記憶されたいかを自問していく。
本を読めば、人生にどれほどすばらしいことが起こるかを、著者の些細な日常のあらゆる局面から思い起こさせ、その描写が美しい。
日常的な読書の効果を示す模範解答ともいえる1冊だ。
https://k-book.org/yomitai/250421/
--------------------
小説 『不適格者のチャート(부적격자의 차트)』
―――――――――――――――――――――――――――
●人間らしさの本質を問いかけるSF小説。
SFアワード、ハン・ナグォン科学小説賞を受賞したヨン・ヨルムの長編小説で、舞台は欲望や感情、夢や想像が禁じられた都市「仲裁都市」。
欲望や感情が禁じられた都市というユニークな世界観のもと、恐怖を乗り越えて外へ踏み出す人々を描いている。
生存のために合理化された都市で生きていく人々を通して、合理的な生き方に人間らしさはあるのか、
日々の生活のなかで人間らしさを忘れていないか、人間らしく生きることの意味を問う。
やや重ためのテーマを扱っているものの、希望が感じられ、余韻が長く残る作品だ。
気づけば自分の気持ちに蓋をしてしまう、という人にぜひ読んでもらいたい。
https://k-book.org/yomitai/250428/
--------------------
◆◇日本語で読める韓国の本◇◆
『こちら、空港医療センター 救急ドクター奮闘記』(シン・ホチョル 著/ 渡辺麻土香 訳/ 原書房)
―――――――――――――――――――――――――――
韓国との行き来に空港を利用することも各段と増えたものの、その裏側で支えている「空港医療センター」なるものの存在そのものを
正直意識したことはなく、驚きとともに読み進める。
一番驚いたのは、世界からやってくる人々、時には飛行中の飛行機内での緊急事態に備える「空港医療センター」が
一定以上の規模の空港には設置は義務付けられているにも関わらず、空港公社からの多少の支援はあるもののその運営そのものは、
センターの運営費を自らで賄っていかねばならない、しかも国からの支援はないということ。
そんな環境の中で仁川空港にある医療センターの院長として奮闘するシン・ホチョルさんが、
さまざまな経験や患者とのエピソード、そして飛行機を利用する前に考えて欲しいアドバイスなども織り込んだエッセイ。
軽快な文章には温かい人柄があふれ、旅する人たちの安全を心から願う言葉の数々はぜひ多くの人に読んで欲しいと思う。
訳者の渡辺麻土香さんから推薦コメントも頂戴しました。
https://k-book.org/yomeru/250410/
『青い落ち葉』(キム・ユギョン 著/ 松田由紀、芳賀恵 訳/ 北海道新聞社)
―――――――――――――――――――――――――――
“私は「脱北作家」という肩書きが宿命のようについて回る作家です。
ある意味、私のアイデンティティーでもありますが、正直なところこの肩書から解放されたいと思っています”という言葉に、思わずハッとさせられた。
そんな著者が祖国に暮らす同胞たちの思いも伝えたい気持ちが勝っていたのだろう。
我々が経験することのない現実の「脱北民」の思いをしっかりと伝えてくれる9篇の短編小説集でした。
また脱北民を受け入れるための韓国社会の施策も知ることができる側面も見逃せない。
訳者のお一人である松田由紀さんから推薦のメッセージを頂戴しました。
https://k-book.org/yomeru/250424/
◆◇ 韓国の出版・本屋事情 ◇◆
教保文庫、3月の月間ベストと注目の新刊(韓国小説)
―――――――――――――――――――――――――――
2月末に発売されたばかりのペク・スリンの新刊が10位にランクインしました。
注目の新刊では大人気のファンタジー小説の最新刊や、注目の若手作家ソン・ヘナの小説集をとりあげています。
https://k-book.org/publishing/2025041002/
教保文庫、3月の月間ベストと注目の近刊(エッセイ)
―――――――――――――――――――――――――――
アイドルや有名なコメディアンのエッセイがランクインしました。
注目の新刊では『教養としての「ラテン語の授業」』で知られる著者による新作を紹介しています。
https://k-book.org/publishing/20250410/
◆◇4月のK-BOOKらじお◇◆
#141 韓国文学は遠くにいる友だちで、近くにいる幽霊みたい byさや@本読みさん|わたし、これ読みました
http://k-book.org/news/radio_141/
#142 韓国・大邱からお届け!ウェブトゥーンと文芸の翻訳の違いは?-中川里沙さん|私、これ訳しました
http://k-book.org/news/radio_142/
#143 2024年輸出規模は約100億ドルを突破した韓国美容の奥深さを知る!|わたし、これ担当しました
http://k-book.org/news/radio_143/
#144 37名の選者が選んだ本を独自のディスプレイで展開!-本屋B&B|わたし、これ推してます
http://k-book.org/news/radio_144/
——————————————
韓国の本=K-BOOKを愛する皆さんに、日本で刊行された翻訳本の新刊情報やイベント情報、韓国現地からの情報、
そして読者の皆さんの声をご紹介するインターネットラジオ「K-BOOKらじお」は、Apple Podcast、Spotify、YouTubeで毎週金曜日 朝9時配信中!
Google Podcastでの配信もスタートしました。
ぜひお好みのプラットフォームで番組登録をお願いします。
Apple👉 https://apple.co/3PRb6VW
Spotify👉 https://spoti.fi/3SgTqEB
YouTube👉 https://www.youtube.com/playlist?list=PLBkX7a7_CVRiEx8w
_____ミニコラム_______
〈五十嵐真希の小さな翻訳恋物語〉
♯4 涙で中断したインタビュー
5月になりました。韓国で5月といえば、5・18、光州民主化運動をすぐに思い浮かべる人が多いでしょう。
特に今年は、尹錫悦前大統領が宣布した非常戒厳令による騒乱のため、いつにも増して多いと思います。
私が初めて“光州事件”という文字を見たのは、『韓国 民主化への道』(池明観著、岩波新書、1995年)です。
ただ、この本は解放後の50年を包括的に語ったものなので、光州に関する叙述は少なく、どのようなものだったのかよくわかりませんでした。
その後、映画「ペパーミント・キャンディー」を見たり、『ソウルの風景―記憶と変貌―』(四方田犬彦著、岩波新書、2001年)を読んだりして、
どうにか頭でイメージできるようになりました。
今は小説や詩集、映画など様々な媒体で光州民主化運動を知ることができます。
小説ではハン・ガンの『少年が来る』(井出俊作訳、クオン、2016年)やパク・ソルメの「じゃあ、なにを歌うんだ」
(『もう死んでいる十二人の女たちと』所収、斎藤真理子訳、白水社、2021年)、詩集では『光州へ行く道 金準泰詩集』
(金準泰著、金正勲訳、風媒社、2018年)や『日韓対訳 韓国・光州事件の抵抗詩』(文炳蘭、李榮鎭編、金正勲、佐川亜紀訳、彩流社、2024年)、
映画では「タクシー運転手 約束は海を越えて」や「光州5・18」など。また、「1980 僕たちの光州事件」が上映中です。
経験者の生の声を目の前で聞かせてもらい、涙を流したことがあります。それは、作家チョン・ユジョンさんです。
『七年の夜』(カン・バンファ訳、書肆侃侃房、2017年)の刊行記念イベントで来日されたとき、インタビューさせてもらう機会に恵まれました。
幼い頃から作家になりたいと思っていたけれど、母の反対に遭い、看護大学を進学先にしようと考えたチョン・ユジョンさん。
夢を諦めきれず、必ず叶えようと決心したのが15歳のときに経験した光州民主化運動だったそうです。
夜、軍人から市民を守ろうと大人たちが出払った家で、彼女は分厚いケン・キージーの『カッコーの巣の上で』を一気に読んで恐怖を紛らわしたそうです。
人間の尊厳性について書かれたラストにとても感動し、本を書くことで自分もこの感動を人々に与えたいと改めて思ったと。
当時のことを語る彼女の口調は切々としていて、子どもたちを銃から守ろうとした大人の覚悟と、
その大人たちはみな死んでしまったにちがいないと思ったという彼女の憤怒と悲しみが私の胸に迫ってきて、気がついたら涙が止まらなくなっていました。
インタビューを中断せざるを得なくなりとても恥ずかしかったのですが、
翻訳の仕事をやっていなかったら韓国の作家さんにインタビューできる機会もなかったはずなので、
翻訳に携わっていてよかったなと思った瞬間でもありました。
このインタビューは『ちぇっく CHECK』3号に掲載しました。
K-BOOK振興会のサイトにある『ちぇっくCHECK』アーカイブで読めますので、よろしかったらご覧になってください。
https://k-book.org/check_archive/
(五十嵐真希)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
発行:一般社団法人 K-BOOK振興会
https://twitter.com/KBOOKshinkoukai
〒101-0051 千代田区神田神保町1-7-3三光堂ビル
TEL:03-5244-5427 FAX:03-5244-5428
mail:info@k-book.org
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
