●本書の概略
赤ちゃんと犬は「同い年」。1歳、どちらもねんねする赤ちゃん。2歳、一緒によちよち歩き。4歳、あっという間に成犬になった犬は保護者のよう。5歳、病気の時もずっとそばで見守っていてくれる。7歳、犬たちは繋がれて女の子たちは遊びに夢中。8歳、一緒に楽しんだ悪戯も今では犬は怒られちゃう。11歳、女の子は携帯に夢中。12歳、おしゃれに気を遣うお年頃。14歳、女の子は思春期。その間犬の目はずっと変わらず彼女の方だけを向いている。
15歳、どんどん世界が広がっていく女の子と、そのそばで数倍早く時間が流れていく犬。生きる速度が違う二人の15年。相棒を見送ってしまい、時が止まったように感じるも日々は続く。もうそばにはいないけど、いつもそばに感じている。ずっとずっと「同い年」。という一人と一匹の友情の物語。
●日本でのアピールポイント
時間の速度を超えた永遠の記憶の世界。
成長と共にだんだん大切な物事が増えていく女の子に対し、犬はその隣で、女の子よりずっと早い時間の流れを生きています。二人は同い年ですが、生きる時間の速度までが同じではないという現実は、犬自らの死によって気付かされます。
原文は生まれたばかりの赤ちゃんが「一歳」と韓国らしく数え年で語られており、現代の日本の年齢の数え方とは若干、子供の成長にズレを感じるかもしれません。しかしそこは小説や児童書など様々な分野で活動してきた画家ジョ・ウンジョンの多様な技法と精密な作業による水彩画タッチの絵がカバーしてくれます。
子どもと犬の温かい交流の物語としては、映画『犬と私の10の約束』(本木克英監督)、『ずーっとずっとだいすきだよ』(ハンス・ウィヘルム著/久山太市絵。評論社)などに通じます。
読者レビューでも「子供も一緒に読んでいたけどだんだん静かになったと思ったら涙を流していた。」「ページを捲るごとに心がジンジンと痛み涙が出てきた」とあるように、どの世代にでも明確にテーマが伝わる点や、文字が少ない点から未就学児向けの教材としてもおすすめです。
子どもたちがペットを欲しがった時、まずは本作を一緒に読んで、ペットを迎える長所、短所について、そして命を迎える責任について話し合ってみるのはいかがでしょうか。そして、準備が整って大切な相棒を迎えることができたら…表紙のキラキラした輝き、向かい合う二人の視線の意味が、きっとわかるはずです。
(作成:森田 奈美子)