■本書の概略
韓国で半世紀以上にわたり人々に愛されてきた詩人、チョン・ホスンが3年ぶりに世に送り出す詩集。全125編の詩のうち、100編が未発表の新作である。
第1部に収録されている表題作「コンビニで少し」は、夜中のコンビニで偶然、かつての愛する人に出くわす場面を描いている。ラーメンを買いに行ったら、缶ビールを買いに来た元・恋人に出くわす。無理やり尋ねた近況は、興味のあるようで興味のない両親の話。今は愛することができない元・恋人との会話は、これ以上深堀りすることもできず、各自で淡々とレジを済ます。
“それぞれの利益を計算するうちにお互いに背を向け/結局、何が純益だったのか分からないまま”別れてしまった恋人との、思いがけない再会。缶ビールやラーメンも登場するリアルな設定でありながら、作者の叙情的な表現あふれるこの詩は、まるでドラマや映画の一場面のようだ。最後の段落はこうだ。“今宵、コンビニのぼやけた照明は/ともに歩いた港の灯りのようにわびしく/さよなら、僕たちがたとえコンビニで少し、会ったとしても/港を照らす黒い灯に沿って/再び夜船は去っていく”
第1部は挫折をテーマにした作品が多いが、第2部では詩人なりの世間に対する心の持ちようが描かれる。第3部、4部は愛というものを信じたくなるような内容で、再び立ち上がれと第5部で勇気づけられる。詩人が挫折や憎悪を経験しながらも、愛を信じ生きてきた様子が感じられるこの詩集は、明るい熱血教師ではなく、悟りを開いた僧侶のような語り口で、人々の心を癒すだろう。
■目次
第1部
第2部
第3部
第4部
第5部
解説|オ・ヨンギョン
詩人の言葉
■日本でのアピールポイント
1972年に登壇し、数々の文学賞を受賞しながら韓国の人々に愛されてきたチョン・ホスンは、御年76歳。人生の先輩が描く挫折からの再起や愛と憎悪、そして許しといったテーマは、国籍を問わず多くの人々の関心を得るものではないか。
韓国焼酎の瓶やスンデスープなど韓国特有の描写も登場するが、昨今の韓国ブームの影響でなじみのある方も多いのではないか。また、現地の地名や建物が登場しても、花や鳥、星や木などの自然とセットで描かれるため、風景を想像することは難しくないはずだ。寺の名前などもたびたび登場するが、日本も同じく仏教が普及した国であることから、日韓の差は気にならずに読み進めることができるだろう。
(作成:こだま かな)

