●本書の概略
新鋭作家のデビュー作。オーディオドラマが大ヒットし、読者の要望が殺到したことから書籍としても発売された。人生という道に迷った時に、つらかった一日の終わりに、物語の世界へ引き込んでくれる本。
童話作家を目指しているヨンソは、ありとあらゆる出版社に原稿を送ってきたが、出版にはこぎ着けずにいる。今日もまたいい返事を聞けず、むしゃくしゃして家の裏山に登るが道に迷ってしまう。そんな時、スーツの上に伝統的な長羽織という不思議な出で立ちをした男、ソジュに助けられる。それ以降ヨンソは、彼の書店に出入りするようになる。店に行くたび不思議な物語を読み聞かせてくれるソジュに、ヨンソはどんどん惹かれていく。
そんなある日、いつものように店へ向かうが、なぜかたどり着けない。疲れ果てて、家に帰るなり眠りに就くと不思議な夢を見る。夢の舞台は今から数百年は遡ると見られる古風な家。ヨンソに似た女がおしどりの置物を手に取り、蓋を開けるという夢だ。その置物には見覚えがあった。ソジュからもらった置物である。目覚めたヨンソが置物の蓋を開けると、中から紙に包まれた角が出てくる。紙には「九色鹿の角で神に願いを告げよ」と書かれていた。
書店に行かせてほしいと願いを捧げたところ、冥途の使者が現れて書店に連れていってくれる。すると少女の姿をした神が現れ、ソジュのせいで前世のヨンソが死んだこと、その罪滅ぼしでソジュが禁忌を犯して今生のヨンソの不幸な運命を変えたことを話す。ヨンソがソジュのもとへ向かうと、そこには血だらけのソジュがいた。冥途の使者からもらった花を傷口にあてたところソジュが意識を取り戻す。そしてソジュが永遠に死ぬことのできない運命だと聞かされる。永遠に生き続ける男と、転生を繰り返す女。決して普通とは言えない2人はこれからも、ともに眠り目覚め、平凡な人間の生を送り続ける。
●目次
・序章 崖の下に残された物語
・第1章 偶然の訪問
・第2章 必然の庭園
・第3章 永遠の結び目
・後日談
・作家のことば
●日本でのアピールポイント
本作は韓国だけでなくイギリスやドイツといった諸外国に版権が輸出され、イタリアではベストセラー1位を記録するなど、その人気は国内だけにとどまらない。韓国ではすでに続編も出版されている。永遠の命を持つ男と、転生を繰り返す女の物語は、ドラマ『トッケビ~君がくれた愛しい日々~』を彷彿とさせ、日本でも受け入れられること間違いなしである。枠物語のような構造で、ソジュの読み聞かせる物語と、ヨンソの暮らす現実にはどこか接点があるように見える。その接点を追いかけているうちにあっという間に読み終えてしまう。タイトルどおり、眠れない夜の一気読みにぴったりの作品である。
(作成:永田愛)

