波よりもっと高く(파도보다 더 높이)

原題
파도보다 더 높이
著者
キム・ジュンヒ
出版日
2025年5月1日
発行元
出版社キョル
ISBN
9791199235601
ページ数
232
定価
15,000ウォン
分野
小説

●本書の概略

人を、心優しく善良な人についての話を書きたいと志す、1993年生まれの若手作家、キム・ジュンヒによる初の小説集。異なった思いや、行き違い、また思わぬトラブルに遭遇するが、何とか生きていく人たちをあるがままに描いた7つの短編からなる。

7つの小説には、会社の過ちで増員採用になった試用期間中の女性、結婚が破綻した女性とデビュー前のアイドル、事業に失敗した男性と廃業した給油所の主人、半失業状態の夫を抱えて一心に働く母とその娘、結婚しないと家族に宣言した女性とその姪っ子、保護者間の争いに巻き込まれた教師と中学時代の同級生、子を持つ外国人労働者と同僚の韓国人などが登場する。
表題作「波よりもっと高く」の内容を一言でいえば、子供と家族との間の気持ちのすれ違いであろうか。姪っ子のトリがサーフィンの練習に打ち込む場面から始まる。女性(わたし)の姉は、活発で頑ななところがある7歳の娘を持て余し、目を離しがちだ。プールに行かないと急に言い出したトリを連れて、女性は毎週末、ソウルに近い人工のサーフィン場に通う。ある日、女性の姉と母親も一緒に行くが、ふたりはトリが波に乗るところを見ていない。そして、カフェでトリが波乗りの格好をするのを母親がスマホで写すと、トリはテーブルを叩いて激しく怒る。その孤独そうな顔を見て、女性は結婚しないと家族に宣言した時のことを思い起こす。母親が自分の育て方が悪くてと言って重苦しい雰囲気に包まれた時、トリはわたしが結婚してあげるよと言ってみんなを笑わせたのだ。その時自分(女性)は同じような顔をしていたのだろうか。女性は、トリに謝るよう母親に言う。
女性はトリを連れて東海岸の海に向かう。トリは上機嫌で、女性が波の乗り方を訊くと「波よりもっと高く、ジャンプ!」と答える。また、プールは追い出されたのだと打ち明ける。到着すると、トリは元気に海に入り、ボードを浮かべて漕いでゆく。天候がすぐれず、水平線からは幾重もの波が押し寄せて来る。

●目次

正午の言語
コンホを訪ねて
注油所キャノピーの下でスライムを考えるということ
オープンラン
波よりもっと高く
星を見に行きます
海岸道路
解説
作家の言葉

●日本でのアピールポイント

日本にもいる普通の人たちの話だ。異なった思いや、行き違い、また、思わぬトラブルに遭遇するが、何とか生きていく人たちをあるがままに描いた作品群であり、日本の読者の心にも響くところがあるのではなかろうか。試用期間中の女性社員を描いた「正午の言語」などは特に身近に感じられるであろう。
7つの小説は、内容はさることながら文章の趣き、肌合い(韓国語でキョルという)もそれぞれ異なっており、読み応えがある。

(作成:まつい)

キム・ジュンヒ
1993年、仁川に生まれる。大学(国語国文学専攻)、大学院修士課程(外国語としての韓国語教育専攻) 2015年6月から9か月間、日本に留学。第3回ミニフィクション新人賞を受賞