●本書の概略
縦に長い形状が特徴。さらに斬新なのは、背表紙がなく、まるで屏風のようにページが連なり、自由に広げられる点。その長さはなんと15メートル。描かれているのは1本の木だ。
はじめ、葉っぱは散り、木は朽ちかけているが、雨が降り始めるとその色合いは一変する。ふたたび葉っぱや花が生え始め、コウモリ、蝶々、キリン、サルや魚など、次々と新しい生き物が生まれてくる。形をしなやかに変え、幻想的に伸びていく木とそこで息づくものたちの躍動。普段は目に見えない生命を表現しようとした作家の感性に触れられる1冊。
●日本でのアピールポイント
これまで手にしたことのない形の絵本だと思います。力強いタッチと複雑に調和する色彩は、じっと眺めていたくなる魅力があります。文章は最低限。朽ちていく木を見せたあと、しとしとと降る雨とともに「木は流れる」という文章が差し込まれると、次のページから新たな命が始まります。それを告げるかのように、「木は出会う」という文字が、今度は上下さかさまに印字されています。上から下へ枯れていくばかりだった木が、ふたたび上へ上へと枝をのばしていくのです。
文章が少ないからこそ、読む人ごとの解釈が可能です。描かれている生き物の姿も多種多様なので、子どもと一緒に探してみるのも良いかもしれません。
(作成:黄理愛)