教保文庫、8月の月間ベストと注目の新刊(韓国通信)

教保文庫の7月の月間ベストセラー(国内小説)と新刊をご紹介します。1位は根強い人気を誇り、世界各国でも翻訳されている『アーモンド』です。ドラマ『サイコだけど大丈夫』の劇中童話の書籍化シリーズは4冊ランクインしました。『保健室のアン・ウニョン先生』もドラマ公開を目前に再び注目を集めています。新作では、済州島を舞台としたキム・グミの長編が間もなく刊行されます。

1位:『아몬드(アーモンド)』ソン・ウォンピョン著(チャンビ/2017.3.31)
昨年10月からほぼ1年連続でトップ3に入るなど根強い人気です。すでに台湾、アメリカ、ベトナム、スペイン、インドネシア、日本、中国、タイで翻訳され、さらにギリシャ、ロシア、メキシコ、イスラエル、イタリア、トルコ、フランスでも刊行が予定されています。
2位:『시선으로부터,(シソンから、)』チョン・セラン著(文学トンネ/2020.6.5)
3位:『악몽을 먹고 자란 소년(悪夢を食べて育った少年)』(『サイコだけど大丈夫』特別童話1)チョヨン著、チャムサン絵(ウィズダムハウス/2020.7.18)
人気ドラマ『サイコだけど大丈夫』に登場する童話作家コ・ムニョンが劇中で描いた童話の書籍化シリーズです。
4位:『우리가 빛의 속도로 갈 수 없다면(私たちが光の速度で行けないならば)』キム・チョヨプ著(ホブル/2019.6.24)
5位:『좀비 아이(ゾンビの子)』(『サイコだけど大丈夫』特別童話2)チョヨン著、チャムサン絵(ウィズダムハウス/2020.7.13)
6位:『봄날의 개(春の日の犬)』(『サイコだけど大丈夫』特別童話3)チョヨン著、チャムサン絵(ウィズダムハウス/2020.7.30)
7位:『달러구트 꿈 백화점(ダラグート 夢の百貨店)』イ・ミイェ著(ファクトリーナイン/2020.7.8)
眠っている人だけが利用できる「夢の百貨店」には、毎日大勢の客が訪れて希望する夢を買い求めます。このYAファンタジー小説は当初『주문하신 꿈은 매진입니다(ご注文の夢は売り切れです)』というタイトルでクラウドファンディングプロジェクトによって発表され、目標金額100万ウォンに対し1800万ウォン以上のファンディングを達成しました。続いて、電子ブックが刊行されると総合ベストセラー4週連続1位を記録するなど人気を博し、読者からの要望により紙の書籍が出版されるに至りました。著者は材料工学を専攻し、半導体エンジニアとして働いた経歴の持ち主です。
8位:『보건교사 안은영(保健室のアン・ウニョン先生)』チョン・セラン著(民音社/2015.12.7)
著者が脚本を書いたNetflixオリジナルドラマ『保健教師アン・ウニョン』が9月25日に公開されるのに伴い、原作も再び注目を集めています。今年3月に刊行された邦訳本(斎藤真理子訳/亜紀書房)も人気を博しています。
9位:『여름의 빌라(夏のヴィラ)』ペク・スリン著(文学トンネ/2020.7.7)
文知文学賞を受賞した表題作をはじめ「아직 집에는 가지 않을래요(まだ家には帰りません)」(現代文学賞)や「고요한 사건(静かな事件)」「시간의 궤적(時間の軌跡)」(どちらも若い作家賞)といった受賞作4篇を含む計8篇を収めた小説集です。
10位:『진짜 진짜 얼굴을 찾아서(本当の本当の顔を探して)』(『サイコだけど大丈夫』特別童話5)チョヨン著、チャムサン絵(ウィズダムハウス/2020.8.31)

注目の新刊は以下のとおりです。
パク・ソリョンの長編『더 셜리 클럽(ザ・シャーリークラブ)』(民音社/2020.8.21)は、二十歳の韓国人ソルヒがオーストラリアの「シャーリー」という名前を持つ女性たちの集まり「シャーリークラブ」に加入し、彼女たちと交流する様子を描いています。ハンギョレ文学賞を受賞した著者の長編『체공녀 강주룡』は、邦訳本『滞空女 屋根の上のモダンガール』(萩原恵美訳/三一書房)が間もなく刊行されます。

韓国科学文学賞の長編部門で大賞を受賞したチョン・ソンランのSF小説『천 개의 파랑(千の青い波)』(ホブル/2020.8.19)は、人型ロボットで騎手の主人公と競争馬、人間の少女の種を超えた物語です。

フェミニズム作家として知られるパク・ミンジョンの小説集『바비의 분위기(バービーの雰囲気)』(文学と知性社/2020.8.11)は、現代文学賞受賞作「モルグジオラマ」をはじめ、性暴力やジェンダー不平等などを描いた7篇を収録しています。

イ・ギホの『누가 봐도 연애소설(誰が見ても恋愛小説)』(ウィズダムハウス/2020.7.31)は、ドラマチックなラブロマンスではなく、平凡な人々の小さな「愛」の物語30篇をまとめたイ・ギホ流の“恋愛小説”です。

キム・グミの長編2作目となる『복자에게(ポクチャへ)』(文学トンネ)も間もなく刊行されます。主人公は10代の頃、IMF通貨危機(アジア通貨危機)の打撃を受け一家で済州島への移住を余儀なくされます。そこで心の支えとなってくれたのが友人ポクチャ。その後、判事になった主人公は左遷された済州でポクチャと再会します。済州の美しい風景とともに彼女たちの物語が描かれます。(文/牧野美加)