●本書の概略
本書は、2016~2020年までインターネット上で成人用Web小説を書いていた著者が胸の中であたためていたストーリーを書きあげた初の長編小説である。
舞台は著者が7歳から住んでいたテジョン広域市。眠りから覚めた人々は若返ったり年老いたりしていた。巨大な鳥と亡者が人間と都市に襲いかかる。テジョン広域市の近代史上に繰り広げられるポストアポカリプス(文明崩壊後の過酷な世界を描くジャンル)小説。
巨大な鳥が人間を捕食し、大気汚染物質が深く立ち込める終末の都市、テジョン。眠りから目覚めてみると少年になっていたスミンは自分よりも幼くなってしまった姉と二人暮らし、依頼人からの依頼を受け、その報酬で生活を保っていた。
ある日、足首まである真っ黒いコートを着た醜い顔の依頼人からヒョンチュンウォンに棲む巨大な鳥を14匹始末し、その時の詳細を報告して欲しいという依頼を受ける。命の危険を伴う依頼に迷いながらも莫大な報酬に依頼を承諾し、スミンは仲間6人と任務に出掛ける。道中、恐ろしいものを目にした1人が逃亡し、6人となってしまった彼らは壮絶な戦いの末に任務に成功するが、3人が命を落とし、スミン自身も左腕を失って意識を失ってしまう。意識を取り戻したスミンの前に再び依頼人が現れ「左腕を与える代わりに2度目の依頼受けて欲しい」と持ちかける。2度目の任務の最中、研究者を名乗る兄妹に命を救われ、姉のもとへ戻るが、そこには依頼人の死体と「鳥と共に去る」という姉のメモだけが残されていた。姉を探しにかつて住んでいたマンションへ向かうと、そこには切断された依頼人の頭部が待っていた。「姉は刑務所にいる」という言葉を残しその頭部は消滅する。紆余曲折の末、刑務所にたどり着いたスミンは体の半分が鳥へと変貌してしまった姉と再会する。「一緒にいればお互いつらくなる」スミンとの別れを望む姉の言葉を受け入れたスミンは、ソウルから押し寄せ街や人を飲み込んでいく亡者たちを逃れるため、4羽の鳥人間とともにテジョンをあとにする。
●目次
第一章 西テジョン:選ばれなかった予言者
第二章 ヒョンチュンウォン:ある依頼
第三章 ヒョンチュンウォン:協業
第四章 ヒョンチュンウォン:瓦解
第五章 サンネ:徴集
第六章 サンネ:抹殺の霊魂
第七章 デファ洞:工場と病院
第八章 デファ洞:偽善の発見
第九章 ビレ洞:姉を探して
第十章 ジンジャン洞:あたたかい監獄
第十一章 ブサ洞:完全無欠な別れ
第十二章 シンタンジン:和解の土地
作者の言葉
●日本でのアピールポイント
本作は、滅びゆくテジョン広域市を舞台にしたポストアポカリプス小説である。舞台は日本人にとって馴染みのあるソウルではなくテジョンであるため、地名にやや距離を感じる可能性はあるが、地図などの挿絵を加えることで空間の把握がしやすくなり、読者は主人公スミンとともに街を歩いているように感じることができる。作品中には人間を捕食する巨大な鳥や亡者が登場するがゲームや漫画、ジャンル小説などからヒントを得た素材が小説の味わい深いものにしている。またロールプレイングゲームのように読みすすめていけるので主人公とともにテジョンを歩き回るうちに気づけば1冊読み終えてしまうような体験が特徴である。ポストアポカリプス物やゲームが好きな読者に特に受け入れられやすい作品である。
(作成:清水綾子)

