4人称の子供たち(4인칭의 아이들)

原題
4인칭의 아이들
著者
キム・アナ
出版日
2025年10月27日
発行元
タサンチェッパン
ISBN
9791130672281
ページ数
256ページ
定価
17,000ウォン
分野
小説

●本書の概略

2021年作家デビューした新鋭キム・アナの小説。「幸せな子供たちの福祉財団」と呼ばれる施設で生活した10代の少年少女の声で描く悪夢(性被害)と復讐の物語。

2歳でベビーカーごと駅に捨てられたグヮンジは盗品で生計を立てる男に育てられ、13歳で万引きをきっかけに、ジェフリー・ヤンの福祉財団に引き取られる。無人島の寄宿舎での生活は一見快適だったが、ジェフリー・ヤンとの面談で酒を飲まされ悪夢に悩まされるようになり、やがて心身を崩して家に帰る。
ビニールハウスで産まれたオーロラは外国人の母に捨てられ孤児院で育ち、外見の違いから孤立。ダンスに救いを見出すが、容姿への中傷で夢を絶たれ、14歳で同じ寄宿舎へ。ジェフリー・ヤンと政治家との面談で酒を飲まされ、ダンスや動物の物まねを強要される。悪夢と体調不良に苦しみ、ストレスと診断されて帰郷するが、悪夢は続いた。
在米韓国人のQ先生の作文教室で、グヮンジとオーロラの夢の記録が一致する。2人は巫女のイェヒとその母ソヒの助けを得て、儀式や不思議な現象を通して悪夢を紐解き始め、山の洞窟の入り口(悪夢の核心)に到達する。やがて同じ夢を見た少年ノアの存在を知り、彼を訪ねて対話を叶える。ノアは島でレイプされてジェフリー・ヤンの島の海岸に捨てられ、ニュースにもなっていた。3人は山の洞窟に向かうが、恐怖に駆られたオーロラは踏み出せず、グヮンジとノアだけが中へ入り、ヤンの罪を目撃。現実に戻った2人は衝撃で道路に飛び出し命を落とす。
残されたオーロラはイェヒと共にヤンを誘拐し、ソヒの家に監禁。同じ悪夢に苦しむ子どもたちを集め、儀式を行う。近くの農場で働いているエイバ姉さんにイェヒが借りて来た農具を手に、子どもたちはヤンに復讐する。処断式は1週間続き、遺体はエイバ姉さんが豚の餌にすると言って引き取る。オーロラは彼女に付いて農場へ向かいながら新たな人生へ思いをはせる。

●目次

Ⅰ 私たち1人称の子
Ⅱ 私たちは3人称の子
Ⅲ 私たちは3.5人称の子
Ⅳ 私たちは4人称の子

●日本でのアピールポイント

性犯罪の被害を受けたことがなくても多くの女性が痴漢やセクハラ、性差別を経験している。恐怖や怒りを感じながらも声を上げられる人はごくわずか。特に幼い子どもたちは、被害を訴えることすら難しい。さらに日本では加害者が守られがちで、刑罰の軽さに疑問の声も上がっている。
本作では、オーロラに導かれた少年少女たちが加害者に復讐を果たす。読者は罰を受けているジェフリー・ヤンと“自分を傷つけたあの男”を置き換えることもできる。性暴力を受けている場面と同様に、その最後の復讐の場面は直接的な描写ではなく柔らかく描かれており、それがむしろ壮絶さを感じさせる。心の奥にしまい込んだ傷の深さを思い知らされる。
傷ついた子どもたちが不器用ながらもお互いに共感し、共有・協力・団結していく姿は胸を打つ。

(作成:櫻井美穂)

キム・アナ
1987年ソウル出身。2021年から執筆活動を開始。文芸誌や文芸ウエブマガジンに短編とエッセイを投稿し掲載された。2023年『1990XX』で第6回「子音と母音中長編小説賞」を受賞。『4人称の子供たち』は2025年に第15回ホンブル文学賞を受賞した。