●本書の概略
本書は、これまで否定的に捉えられてきた「怠け」を、新たな視点で捉え直すエッセイである。著者は、安定したキャリアを築ける大企業を退職し、1年間だけ怠けた自分を見つめてみようと決意した。そして、SNSでの連載『ケウルントゥーン(게으른툰)』を通して注目を浴びた。本書には、その連載から選りすぐったマンガ27篇に加え、鋭さとユーモアを併せ持つエッセイが収録されている。
著者は、「怠け」を怠慢や無能さではなく、生まれ持った気質であり、自分自身を守るための防衛機制として再解釈する。し烈な競争を勝ち抜きながらも、持続可能な幸福を求めて退職を選んだ自身の経験を通して、「怠け」の中にこそ幸福へのヒントがあると語る。
本書では、先延ばしや完璧主義、一夜漬けなど、誰もが身に覚えのある“怠けの言い訳”を丁寧に掘り下げるとともに、怠けを〈倦怠型〉〈回避型〉〈散漫型〉〈合理化型〉〈無気力型〉の5タイプに分類。読者が自分の怠けを否定するのではなく、理解し、受け入れるための視点を提示する。
著者は、「大人」になれない自分を責める人々を、あえて「ウルン(おとな)」と呼び、自己理解こそが真の成長につながると語りかける。また、社会の基準に無理に合わせようとして疲れ切った人々に向けて、「自己否定をやめ、自分の中の怠けと向き合ってほしい」と伝える。
自嘲的で率直な文章と、軽やかなマンガで構成された本書は、気軽に読み進められる一方で、人生のリズムや回復について深く考えさせる一冊である。怠けは、決して排除すべきものではなく、自分らしく生きるための重要な要素なのだと背中を押してくれる。
●目次
推薦文
はじめに|人は簡単には変われない、らしい
主人公を紹介します
PART1 ちょっと言い訳させてください
PART2 あなたはどんな“怠け者”ですか?
PART3 きっちり生活に反対します
PART4 大人じゃなくて、“おとな”くらい?
おわりに|怠けたままでも、ちゃんとした“おとな”になれるなら
●日本でのアピールポイント
本書は、“きっちり生きること”を求められやすい現代において、怠けることを否定せず、自分のリズムで生きるための視点を与えてくれる。
チャンネル登録者数70万人以上のYouTuberドローアンドリューは、「速さを強要される時代に、自分のリズムを守りたい“ウルン”たちのための、もっとも人間的な宣言」と本書を評している。
また、著者は、日本を代表する作家・村上春樹が長年続けているランニング習慣を引き合いに出し、「うまく生きるためには、速さではなく、ペースを知り、それを維持することが大切だ」と語る。成果や効率が過度に求められる現代社会にいる日本の読者にとっても、この視点は胸に響くだろう。
日常の小さな感情や思考をすくい上げる語り口は、イラストレーターでもある益田ミリや原田ハマのコミックエッセイを想起させ、日本の読者層にも親しみやすい。マンガと文章を組み合わせた構成により、怠けの種類や心理が直感的に理解できる点も大きな魅力だ。
(作成:西嶋広美)

