ナビエ・ストークス方程式と僕らの最終定理(コ・ジョンウク 著/岡崎暢子 訳/町田メロメ 絵/東京ニュース社)

韓国発の児童書も数多く出版され始めた中、本書もまた子ども自身が、また子どもと親が、そして本作は教師もまた一緒に楽しめるエンターテインメント性と示唆に富んだ一冊。父が失業し、ソウルから田舎町にやってきたジョンピョ。クラスで出会った数学オタクと呼ばれているジョンシク、そしてやはりムービーメーカー的な存在のカインの3人が、豪雨で流されたと思われる寺の財宝探しに挑む。しかもジョンシクが得意とする「数学」を用いて、という展開が新鮮です。単なる冒険物語に終わらない、背景に見える大人たちの失業問題や環境問題の描き方がまた韓国ならではと言えるでしょう。読み終わった後の爽快感が堪らない作品です。

翻訳を担当された岡崎暢子さんから推薦のメッセージを頂戴しました。

「数学はお金も稼げるし、メシも食わせてくれるさ!」。“数学の天才”ジョンシクが主人公ジュンピョに言った言葉だ。数学講師の父をもつ、数学が苦手なジュンピョ。家庭の事情もあり人生諦めモードだった彼が、つまらないと思っていた数学の面白さや可能性に気付く過程で、自分の可能性にも気づいていく――。
本書は、数学のチカラで流出した文化財探しをするという冒険要素を軸にしたティーン向け小説ながら、レールを外れた大人の生きづらさや貧困問題、環境破壊や気象異常といった社会的テーマも巧みに織り込まれている。社会のひずみの中で必死に生きる主人公たちの姿に触れた読者は、深いカタルシスを得るだろう。軽やかな語り口でさらりと読めて、子どもも大人も、それぞれの視点から楽しめる。これぞ韓国で絶大な人気をほこる児童文学作家コ・ジョンウク先生の真骨頂。ラストの爽快感まで、ジュンピョの冒険に同行してください!

ナビエ・ストークス方程式と僕らの最終定理(コ・ジョンウク 著/岡崎暢子 訳/町田メロメ 絵/東京ニュース社)