『モンスター・チャイルド』(イ・ジェムン 著 / 山岸由佳 訳 / スカイエマ 絵/ 評論社)

「子どもが子どもに、子どもが大人にすすめる本」のキャッチコピーの通りの児童書です。架空の突然変異腫瘍症候群(ミュータント・キャンサラス・シンドローム:MCS)は、全身に毛が生え、体が大きくなり、力が数倍にも強くなることから、「モンスター・チャイルド・シンドローム(MCS)」とも呼ばれている。そのMCSである小学6年生と2年生の2人の姉弟は、その症状が周囲にバレることを恐れ、引っ越しと転校を繰り返してきたが、転校先で同じMCSの少年と、さらにMCS研究者の名医(所長)との出会いが大きな変化をもたらす作品です。
子どもたちのための本ではあるものの、「わたしたちの話に耳をかたむけ、わたしたちのよいところを見つけてくれる」「自分が自分を愛することで人からも愛されるようになる」など、所長(大人)が投げかける言葉、受け止める力でこんなにも変わるのだと、思わず涙もこぼれるほど。子どもたちに向けた本でありながらも、実は私たち大人への大きなメッセージが詰まったYA小説です。

翻訳を担当された山岸由佳さんから推薦のメッセージを頂戴しました。

「木が木であるように、鳥が鳥であるように、君は君」――本文より

えてして「どうせ自分なんて」と思いがちな十代になりたての子どもたちに、自分自身がいかに大切な存在であるかを気づかせてくれる物語です。小学校でもっともよく読まれる本、子どもが大人にすすめる本として広まり、2024年に韓国でベストセラーとなりました。

著者は、現役教師として小学校の教壇に立つ、二足のわらじ作家イ・ジェムンさん。原書を読み、ふだんから子どもたちをあたたかく見守っているであろうことが伝わってきて、学校生活のようすや子どもたちのリアリティーあふれる声を日本語に訳していく時間は、とても楽しくしあわせなものでした。

架空の病「MCS」を背景に小学六年生の女の子ハニが葛藤する世界は、コロナ禍でわたしたちが経験した現実と重なるものがあります。あのとき、そして今、社会はいったいどんな姿なのか、わたしたち(大人たち)は心してかえりみる必要がありそうです。
ヒーロー映画のような展開で、子どもの読者が楽しめるのはもちろんのこと。子どもたちをはぐくむ場所にいる大人の方々にも手に取っていただければと!
(山岸由佳)

 

『モンスター・チャイルド』(イ・ジェムン 著 / 山岸由佳 訳 / スカイエマ 絵/ 評論社)