●本書の概略
ドンヒは海沿いの田舎町に住む小学校6年生の女の子。通っていた小学校が廃校となり、近くにも小学校があるが、バスを乗り継いで遠くの小学校に通うことになった。
ドンヒには肌の色が違う小学校1年生の弟がいる。ドンヒのパパが再婚して、フィリピン人の新しいママができたのだ。ドンヒは肌の色が違う新しいママと弟のことでからかわれるのが嫌で、自分の家族を知る人が誰もいない遠くの小学校を転校先として選んだ。新しい小学校で友達と楽しく過ごしていたある日、弟のこともママがフィリピン人であることもみんなに知られてしまった!そして仲良しグループから仲間外れに…卒業まであと数カ月。
自分が抱えている複雑な気持ちは誰にも知られたくないし、選択はいつも難しい。葛藤する12歳のドンヒの今日を描いた作品。
本書は、韓国の小学生の朝読書の推薦作品にもなっている。
●目次
1.午前6:30 バレた秘密
2.午前7:40 大きな口の中へ
3.午前8:45 夢の外に押し出される
4.午前10:00 本当にこれでおしまいだ!
5.午後12:50 チョコレート
6.午後1:40 pride,プライド
7.午後3:00 ママにもママがいる
8.午後4:20 ドング ごめんね
9.午後6:30 リズムに乗る練習
10.午後8:15 今日が終わる前に
11.午後9:30 私たちの明日
●日本でのアピールポイント
日本で出版されている小学校高学年向けの児童書は恋愛や、友達関係を中心としたものが多く、多文化家族は話題になっていない。韓国では多文化家族がどんどん増えており、社会的にも「多文化家庭」という言葉が一般的であり教育現場でもかなり広くいきわたっている。あまり話題にはならないが、この問題は韓国だけの問題ではない。日本の小中学校にも外国にルーツを持つ子どもが増えている。日本で生まれて日本で育っても外国にルーツがあるというだけでいじめられる子どももいる。日本はどちらかというと閉鎖的で、自分たちと異なる個性を排除する傾向にある。そんな子どもたちは、表面上は何不自由なく生活しているように見えても、本人にしかわからない苦悩や葛藤があるのではないかと思う。本書は、多文化家庭の問題を前面に押し出して扱うのではなく、あくまでも思春期に差しかかった小学校高学年の女の子の視点で描かれている。多文化問題以外にも、SNSのトラブルといった、日本でも現実的に起こっている問題を扱っている。ぜひ現代を生きる多感な時期の子どもたちに読んでほしい一冊だ。
(作成:小倉エレナ)

