●本書の概略
誰でも相手の言葉を聴きたくないこと、後悔するような言葉を口にすることがあると思う。本書は、「つながりの対話」ワークショッププログラムを開発し、対立の仲裁や集団対話訓練および個人の対話カウンセリングを行っているリプラス(Replus)人間研究所の所長、パク・ジェヨンによるそんな対話とコミュニケーションで起こりうる衝突をテーマにしている。日常で経験する誤解や対話における不快さの原因を分析し、こじれた関係をほぐすことで、「つながりの対話」を実現するための、より良いコミュニケーション方法を提案している。コミュニケーションにおける衝突の大半は、言葉の内容よりも「言葉の使い方」からくるものだと著者は強調しており、言葉の背景にある感情や欲求を理解することが重要だと述べている。対話を通じて相手を打ち負かそうとするのではなく、共感と傾聴を基に真の気持ちを共有することこそが健全な関係の基本であることを教えてくれている。本書には、実際につながりの対話の練習をする方法が多く提示されており、実践しやすく、理解しやすい内容で、読者に自己理解のヒントを与えてくれる。様々な局面で、人間関係において役立つ実践的なアドバイスが詰まっており、コミュニケーションについてより深く考えられる一冊となっている。
●目次
1. 関係を苦痛にする断絶の対話要素
2. 関係を幸せにするつながりの対話要素
3. 相手の言葉に反応する聞く練習
4. 自分の気持ちを表現する話す練習
5. 健全な関係のための分かち合う練習
●日本でのアピールポイント
相手の言葉に傷ついたり、自分の思いがうまく伝わらなかったと感じたりしたことのある人に、ぜひ読んでほしい一冊だ。日本人は「空気を読む」ということを無意識のうちにしたり、あいまいな表現を使ったり、本音とは裏腹に相手の意見に同調しがちな一面がある。コミュニケーションにおいてはそれがかえって、相手とのすれ違いやストレスの原因になることもある。本書はそうしたすれ違いの原因を解き明かしながらも、自分も相手も尊重できる対話の方法を示してくれる。日常のあらゆる場面で役立つ内容が登場しており、我慢ではなく、理解を通じて関係を築くためのヒントが散りばめられている。また、著者は物書きとしてだけでなく、講演者としても活躍しており、心地よい声で人々に語りかけるスタイルが印象的だ。韓国語がわからなければ講演内容の理解は難しいが、書籍であれば、翻訳を通じて日本人読者にも伝えられる。コミュニケーションで悩んでいるすべての人に寄り添う著者の説得力ある言葉をぜひ日本でも味わってほしい。
(作成:小倉エレナ)

