●本書の概略
本書は、2017年からYouTubeチャンネル「転がれグルニム」を運営するキム・ジウの初めてのエッセイである。個性豊かな著者が、若い女性として、障害を持つ者として、車いすに乗る者として、学生として、誰かの家族として、生まれてからこれまでに韓国社会で経験してきた日常が綴られている。幼い頃にリハビリのために病院に長期滞在していたこと、障害児を抱える親の手探りの日々や、障害やリハビリについての情報が少なかったことによる苦悩、著者家族が経験してきた差別などを、独特でウィットに富んだ語り口で思慮深く綴っている。両親を呼び捨てにしているところにも著者の個性が表れている。著者は本書を通じて、障害者と健常者の双方が、日常の中に潜む差別や偏見を振り返り、互いの理解を深めてほしいと願っている。
●目次
プロローグ
1.共に生きる方法を観察する存在
2.それらくし見えないけど話し上手
3.ドキドキするくらいに多様な
4.幸運はなくとも人生は続いていく
●日本でのアピールポイント
検索してみると、日本にも車いすに乗るユーチューバーは存在するが、著者のように、脳性まひのこと、親や自分の苦悩、日常のことをこんなにも赤裸々にさらけ出している人は見当たらない。著者が幼かった20年前には、インターネットも今のようには発達しておらず、病気に関する情報を収集したり、同じ境遇の人を身近に見つけたりすることは難しかった。著者のYouTubeチャンネルには、著者と同じ境遇の子供を持つ親からのコメントや質問も多く寄せられる。障害者と健常者の懸け橋になるために様々な活動を行っている著者が執筆した本書は、韓国だとか日本だとかの垣根を超えて、多くの人に勧めたい。そして、ハンデがあっても多くのことに挑戦している著者についてもっと多くの方に知ってほしい。
(作成:小倉エレナ)