●本書の概略
労働エッセイ作家のハン・スンテの3作目の本である。2作目の『肉に生まれて』で第59回韓国出版文化賞(教養部門)を受賞した著者が今回は消えていく職業の場面を記録した。色々な媒体で指摘している、技術の発達で代替される可能性が高い職業の中でも著者自身が体験した4つの仕事、コールセンター、宅配分類、バイキングのキッチン、ビルの清掃のもしかして最後かもしれない姿を卓越な観察力で述べている。著者はこの4つの仕事をまた「電話する」、「運搬する」、「料理する」、「清掃する」の動詞で表現し、まだはっきりと存在する仕事を必死でしている彼自身や仲間の姿を生々しく表現している。
●目次
・はじまり:紹介する
・1部 電話する
・2部 運搬する
・3部 料理する
・4部 清掃する
・おわり:書く
●日本でのアピールポイント
技術の発展はすでに我々の生活にも影響している。インターネット買った商品の問い合わせをチャットボットが自動で受け付けて、レストランで頼んだ料理をロボットが運んでいる。その隙間に人間の姿は見えない。
本書で登場する仕事は簡単に就けるが、心理的に、体力的に消耗してしまう作業が多い。理不尽な電話を受けて続けたり、一日に25トンの荷物を運んだり。だから消えてしまうのか、だからと言って代替されてもいいのか。ユーモア溢れる体験談はそういう質問を4部に分けて投げ続けている。
我々は消える仕事の当事者かもしれないし、当事者のそばにいる人かもしれない。この本を読むことは韓国社会を覗くことができるとともに、似たような社会状況の日本の読者にも訴えるところの多い一作となるだろう。
(作成:ジョン・ジミン)