●本書の概略
わたしは、いっとき生まれたばかりの小さな芽で、わたしは、いっとき子馬の尻尾で、カーテンにもなって。あるときは燃える夕日のようで、あるときは旅行にいったりもした…。
この物語の主人公は髪の毛。心機一転、大胆に髪の色を変えたとき。自尊心の表現のように長く長く伸ばしたとき。大切な髪の毛が抜けていってしまったとき。人生の場面場面で変わるそれは、一人の人間の記憶でもある。いっとき訪れた日々へのいつくしみや肯定を、これまでになかった視点で描き出す絵本。
●日本でのアピールポイント
語り手が髪の毛という斬新な設定が一番の特徴です。小さな芽や子馬の尻尾、萌える夕日など、子どもが読んでも理解しやすく、ユニークな内容になっています。
一方、成長するにつれて増えていく経験や感情が、後半はより密接に髪の毛とリンクしていきます。大人はアルバムを眺めるようにしみじみと物語を味わうことができるでしょう。
登場人物には、分かりやすい表情が描き込まれていません。読者が自分を重ね、かけがえのない記憶を取り出せるよう、やさしくよりそってくれる1冊です。
(作成:黄理愛)