●本書の概略
クィア・フェミニストのアーティストとして、また社会運動家として20年にわたり旺盛な活動を続けているイバンジハの2冊名のエッセイ集。前作『となりのクィア イバンジハ』ではクィア当事者としての自身の人生を描き、韓国出版文化協会の「今年の青少年教養図書」にも選ばれるほど、ジェンダーを2つだけに分けている社会にイシューを与えた。今作ではクィア、フェミニスト、韓国人、アーティストとしての作者が社会とぶつかりながら生まれた話がイバンジハ特有の軽快な筆致でつづられている。タイトル『私ってなぜこんなに面白いんだろう』は作者がただ面白くてユーモアにあふれた人だからではなく、優しそうな社会の中に潜んでいる差別について可笑しく、そして鋭く問いを投げる作者であるこそ付けられる題名である。
●目次
・プロローグ
・Part1. イバンジハの時間はさかのぼる
・Part2. イバンジハの寂しい世界
・Part3. イバンジハの外の世界
・エピローグ
●日本でのアピールポイント
下手したら重くなりがちな話題の「クィア」「フェミニズム」「社会参加」「アーティストとしての少し苦しい生活」などについて、作者はそのすべての当事者として「笑わば笑え」の気持ちで話を進めていて、まるでコミックなドラマを見ている気もする。しかし、本書は面白かった、だけでは終わらない。韓国社会をいまだに厚い雲のように覆っている家父長制、LGBTQに対する人々のしかめっ面について当事者の目から見た風景をあからさまに表現しており、いわゆる「正常性」を持つ人が伝える韓国社会の裏面を発見することができるだろう。
「多様性」というキーワードがいろいろなところで見当たる今、それを社会の大きい動きとしてとらえるのも重要だが、本書を通じて気楽に当事者の話を読みながら自分の隣にいるかもしれない彼らを理解する機会がみんなに与えられると思っている。
(作成:ジョン・ジミン)