苦しみは分けあえるか

原題
고통은 나눌 수 있는가
著者
オム・ギホ(엄기호)
出版日
2018年12月7日
発行元
ナムヨンピル
ISBN
9791187890126
ページ数
304ページ
定価
16,500ウォン
分野
人文
●本書の概略

苦しみは、本人だけでなくそばにいる人をも破壊する。本書の著者オム・ギホ氏は、自身が携わった人権問題の現場で支援者たちが心を病んでいく様子を目にした経験から、苦しみを乗り越えるためには「そばにいる人を守る方法」を考えることが重要だと提起する。当事者のそばでもどかしい思いを抱える人たちへ向けた、苦しみとともに歩むことについての考察をまとめた一冊。

●日本でのアピールポイント

厚生労働省の調査によれば、日本における精神疾患の患者数は1999年から2014年の15年間でほぼ2倍に増えている(厚生労働省『患者調査』)。書店でも不安やうつなどへの向き合い方を扱う書籍が増えるなど、日本でも苦しみへの対処法は関心の高いテーマである。その中でも本書のように“当事者の周辺にいる人”をターゲットにした視点は新しい。「苦しみは一人ではなく周りの人たちと乗り越える」というメッセージは、他人に無関心になりがちな現代だからこそ、国を問わず多くの人と共有したい。

(類書)
第3部で言及されている対話の可能性については、河合隼雄氏ほか物語の効果を取り上げた下記書籍と通じる点が多い。
・『生きるとは、自分の物語をつくること』(河合隼雄・小川洋子、新潮社、2011年)
・ 『人はなぜ物語を求めるのか』(千野帽子、筑摩書房、2017年)

(味志佳那子)

著者:オム・ギホ(엄기호)
人権研究所「チャン」研究活動家、延世大学などでの講師、ウリ神学研究所研究委員ほか。大学入学後、学生運動に関わる中で“民衆の苦痛”を軸とする解放の神学の洗礼を受ける。国際団体で働きながら世界各地の苦しみを人権という言語で読み解く方法を学んだ。韓国に帰国してからは教育現場と日々の暮らしの中で“そばにいる人のそば”に立つ練習中。