●本書の概略
編集者出身の小説家、作家やアーティスト活動も行うブックデザイナー、企画広報やMDの仕事を経て、現在はポッドキャスト番組のブックコーナーも担当するライター。そんな本が好きでそれを仕事にした3人が、本にまつわるあれこれを語る。
テーマは多岐にわたり、チョン・セランは推薦文寄稿、改訂版やグッズの作成、審査、講演といった執筆以外の業務や、著者のメディア露出、労働環境、業界の未来と安全性、他業界との共存などの問題についてつづる。キム・ドンシンは、ブックデザインの類型やトレンド、デザイン業界での女性の立ち位置、賞のあり方、契約書の問題などを取り上げ、シン・ヨンソンは、さまざまな職を渡り歩いた経験、フリーランサーとしての生き方、人との出会い、本という商品への思いなどを述べる。
●目次
はじめに
チョン・セラン
キム・ドンシン
シン・ヨンソン
●日本でのアピールポイント
日本にも業界を解説するお仕事本や出版業界に問題提起する書籍はある。本書がこれらの書籍と異なるのは、経歴の違う3人が各自の視点から考えをつづっていることだ。そのため、出版業界のあれこれを知ることができて楽しい本であると同時に、読み終えたあとにはさまざまなことを考えさせられる。なぜなら彼らが問題提起する事柄は、出版業界だけではなく社会全体が抱える問題でもあるからだ。かといって悲観的な話ばかりが続くわけではない。シン・ヨンソンの職を変えながら仕事を続けてきた経験談などは、働きながらも進路に悩む人々に勇気を与えてくれる。
気軽に読み進められるエッセイ形式でありながら、社会問題へ視線を向けさせ、一方でエールも送ってくれる本書は、いま懸命に働いている日本の社会人や進路に迷う若者の心にも響く1冊だと思う。
(作成:諏訪さちこ)