●本書の概略
表の庭にお母さん鶏と一緒に暮らしているひよこは、ある日、塀の上に飛んできたすずめと出会い、「僕もすずめさんみたいに飛んでみたい。」と憧れます。しかし飛ぶ夢を持つことに反対するお母さん鶏とは分かり合えず、裏庭に家出してしまいます。そしてひよこはひたすら飛ぶ練習をしました。走って、転んで、跳ねて、尻もちついて‥‥。
黄色くふわふわだった羽毛が白くなるほど時が過ぎたある日、表の庭でお母さん鶏が犬に追いかけられている声が聞こえてきました。お母さんを助けるため表の庭に駆けて行ったひよこは、犬との追いかけっこの際に白い羽を広げて、塀の上まで飛ぶことができたのです。その姿を見たお母さん鶏は、なぜひよこの夢に反対したのかを教えてくれます。
「あなたは立派な鶏になったわね。」
ひよことお母さんはやっと仲良し親子に戻ることができました。
子どもには夢に向かって努力する勇気を。パパママには素直に気持ちを言葉にする勇気を。
日本でのアピールポイント
ひよこのひたむきな姿は『ぐるんぱのようちえん』(西内ミナミ作、堀内誠一絵、福音感書店)や『ぼくだってとべるんだ』(フィフィ・クオ作絵、まえざわ あきえ訳、ひさかたチャイルド)を、ひよこのふわふわした柔らかさが感じられる水彩画タッチの絵と親子の関係は、『手ぶくろを買いに』(新美南吉作、黒井健絵、偕成社)を思い出させてくれました。
夢に向かう理想と現実、それに向き合う親子の関係というテーマは、国や文化、また世代にも関係なく誰もが共感できます。
韓国の読者レビューでも、ひよこの努力する姿や絵の可愛らしさに対する評価の声が多く、ふと思い出して何度でも読み返せるように、手が伸ばせる本棚の取りやすいところに置いていただきたい、贈り物にしても喜ばれそうな一冊です。
絵本作家になりたいという夢を持ち続け、周囲の人に本気と思われなくても努力をし続けた、著者の自叙伝とも言えるデビュー作です。
「すぐには叶わない夢でもあきらめないでください。飛べないと思っていたひよこが大人になったら飛べたように、あなたもきっといつかできますよ。あなたの心の奥の夢を応援します。」(原書著者紹介より)という熱いメッセージが作品からも伝わります。
(作成:森田 奈美子)