ともだちの伝説(친구의 전설)

原題
친구의 전설
著者
イ・ジウン
出版日
2021年6月16日
発行元
ウンジンジュニア
ISBN
9788901251226
ページ数
72
定価
14,000ウォン
分野
絵本

●本書の概略

鋭い目つきでにらみ合うトラとタンポポ。インパクトのある表紙はユニークな物語の始まりを予感させる。本作は2019年に出版された『パッピンスの伝説』に登場するトラの若かりし頃を描いたものだ。もちろん、前作を読んでいない読者でも楽しめる魅力いっぱいの友情ストーリーだ。

他の動物と顔を合わせれば「うまいものくれたらお前を食べないでやる」と脅かすトラは誰にも相手にされず、いつもひとりぼっち。ある朝トラが目覚めると、しっぽに一輪のタンポポがくっついていた。ぶんぶん振り回しても、ぐいっと引き抜こうとしても離れない。そこからおかしな共同生活が始まる。いつものように「うまいものくれたら……」とトラが言い始めると、タンポポが「うれしいな」と後に続き、動物たちとトラの距離は徐々に近づいていく。月日は流れ、タンポポの花びらは綿毛へと姿を変え、トラの黄色い毛も真っ白に。ある夜、ふたりは罠にかかってしまう。もうだめだと嘆くトラに「僕を吹いてみて」とタンポポ。綿毛の自分が遠くまで飛んでいくことで仲間に危険を知らせたのだ。トラは駆けつけた動物たちに助けられるが、タンポポの姿はもうない。タンポポいっぱいの野原で寝転ぶトラの姿、タンポポによく似た顔のおばあさんの語りで物語は終わる。

友情、協力、感謝、そして別れ……虚勢をはり孤独だったトラがタンポポという友人を得て、変わっていく姿は私たちにたくさんのメッセージを投げかける。この作品を制作中に15年を共にした愛犬がこの世を去ったという著者。あとがきでは「わたしたち、本当の友達だったよね」と「友」に問いかける。友が引き合わせてくれるもの、別れが見せてくれる新しい世界への想いがつまった1冊である。

●日本でのアピールポイント

「子どもに読み聞かせながら自分が癒された」「人生で最高の絵本!」この本を読んだ韓国の母親たちの声だ。ウンジンジュニア「0才~100才まで楽しめる絵本シリーズ」にふさわしく、愛らしい動物たちや漫画のようなコマ割りは子どもたちを惹きつけ、韓国らしいタッチのニヒルなトラと優しい色彩は大人たちを癒してくれる。綿毛が飛んでいく夜の森、花々が咲き乱れる野原のページはそのまま絵画として飾りたくなるほど美しい仕上がりだ。人生の教訓を語り継ぐ童話の要素を残しつつも独創的なストーリーは新鮮で、日本の読者にとっても大切な絵本になるだろう。

                                (作成:髙橋恵美)

イ・ジウン 韓国とイギリスにおいてデザイン、絵画を学ぶ。『イパラパニャムニャム』が2021年ボローニャ・ラガッツィ賞のコミックス・幼児向け絵本部門で大賞を受賞。韓国のみならず海外でも高く評価を受けている。邦訳されている作品には『かみになっちゃったパパ』(2016年・渡辺奈緒子訳・ワールドライブラリー)がある。