いや、こんなご時世に誰が(아니 요즘 세상에 누가)

原題
아니 요즘 세상에 누가
著者
クァク・ミンジ
出版日
2021年12月10日
発行元
ウィズダムハウス
ISBN
9791168121041
ページ数
279頁
定価
15,000ウォン
分野
エッセイ

●本書の概略

結婚する気はないと非婚者の立場を表明しても、返ってくるのは「いつかは結婚するだろう」「あんたみたいな子が一番に結婚するんだよ」などの的外れなものばかり。
時代が変わったとはいえ、まだまだ「結婚すること」を当然視する世の中に、非婚者である「私」の声を届けようと始めたのが、著者が制作・進行を手掛ける『非婚ライフ可視化ポッドキャスト、非婚の世界』。本書は、この放送がきっかけとなって出されたエッセイ集である。
非婚者としての「私」がこの世の「当たり前」に鋭く切り込んだかと思ったら、自分を受け入れてくれる人たちへの深い愛を語り、さらには一人暮らしだからこそできるボランティアの話など、多彩なテーマで綴られたエッセイ約25編が収められている。

●目次

プロローグ
非婚宣言:大げさに、決心だなんて
非婚冠婚葬祭:幸せと悲しみを分かち合う時に、そろばんを弾いたりしない
非婚ライフ:私の保護者として、私と共に生きる
非婚共同体:完璧に理解できなくても、完全に愛することはできる
エピローグ
推薦文

●日本でのアピールポイント

本書は、結婚しないという道を選んだ「非婚者」である著者の視点から、家族や友人、社会とのつながりを語る内容であるが、決して結婚そのものや特定の生き方を否定するのもではない。全体を通して、「いつか非婚が普通のこととして受け入れられる世の中になれば…」という切実な思いと共に、「声なき声を可視化させよう」と試みる少数者としての決意と、他の少数者への連帯の意思が感じられる。
また、自分自身を愛しながら、選択した道に責任を持って生きていくためのヒントが散りばめられており、「非婚者」ではない読者であっても共感できる部分を容易に見つけられるだろう。
「声なき声」というのは、誰かにとっては耳の痛い話であり、まだ誰かにとっては理解しがたい話である。だが、「こんな生き方もあるんだ」という気付きが、今まで見えてこなかった「他者」の存在を浮かび上がらせ、それが多様な生き方を許容する社会を作る原動力になるのであれば、本書が果たす役割は小さくない。
著者は言う。「自分の存在や選択を疑ってしまうような失礼な質問をされたら、『いや、こんなご時世に…』と言う言葉を使ってほしい」と。
何となく感じていた「常識」への違和感が次々と言語化されていく爽快感と、どんな人生を歩もうと私たちはひとりではないと思わせてくれる安心感を得られる一冊だ。

(作成:金知子)

クァク・ミンジ
作家、ディレクター、コラムニスト、大工、出版社社長など多くの肩書を持つが、何かを作るという意味で「作家」と呼ばれるのが一番好き。『非婚ライフ可視化ポッドキャスト、非婚の世界』の制作者兼進行役。著書に『歩いて混乱の中へ』、『私は悲しくなったらポールダンスを踊る』などがある。