●本書の概略
「幼い頃、両親がけんかをしているとその間に挟まれてどうしていいかわからなかった。誰かがそこから引っ張り出してくれればいいのにと思うこともあった。大人になると、誰もがなにかの間に挟まれながら戸惑い、疲弊しながらもなんとか折り合いをつけて生きているのだと思うようになった。そんなことを絵本にしてみたいと思った」という著者の思いから生み出された絵本。
ある日少女が家に帰ろうとしていると白い犬が雲に挟まれていた。屋根の上で昼寝をしていたら突然雲が押し寄せてきたのだという。少女ははしごを使って犬を降ろしてやる。
翌日、少女はスーパーの前でおばあさんの皺に針を挟まれた蚊に出会い、また助けてやる。翌日はマンホールの穴にくちばしを挟まれたペンギン、その翌日はごみ箱に挟まったクマ、またその翌日はおじさんのお尻に挟まったスカンク、サッカーゴールに挟まったタコ…と七日間に渡って「なにかに挟まれた誰か」を助ける少女。
七日目に文房具店でおならのにおいに挟まれて気絶しているひとたちを助けるためにドアを開けた少女が疲れ果てて家に帰ると、両親が大声でわめき散らしながらけんかをしていた。よく見ると、けんかをしている両親の間にふたりのけんかの妖精が挟まっている。両親がけんかをしているから妖精たちが挟まれているのか、妖精たちが挟まれているから両親がけんかをしているのかはわからない。この妖精たちのために家族が壊れてしまったらどうしよう、と少女は両親の間から妖精を引っ張り出そうとする。おどしてみたり、必死で頼んでみたり、お菓子やおもちゃで釣ろうとしたりもしたが、妖精たちは動かない。少女は考えた末に、妖精たちをくすぐることを思いつく。うっかり笑ってしまった妖精たちは、けんかの妖精として笑ったことを恥じながら去っていく。
けんかをやめた両親はソファの上で少女を挟んで居眠りを始める。少女は、自分がなにかに挟まれたら誰か助けてくれるだろうかという心配を頭に浮かべつつも、両親に挟まれた幸せを感じながら両親とともに眠る。
●日本でのアピールポイント
韓国の小学校低学年程度と思われる少女の日常は日本のそれと大きくは変わらないと思われるが、二日目に少女が買いに行くのがホットク(シナモン入りの黒砂糖を小麦粉で包んで焼いた、韓国の代表的な菓子)であったり、その隣がいかにも韓国的な小さなスーパーであったりと、小さな違いを見つけるのが日本の子どもたちの「外国への入口」になりうる絵本。
(作成:飯田 浩子)