誰にも護られない(아무도 돌보지 않은)

原題
아무도 돌보지 않은
著者
ピョン・ジアン
出版日
2021年1月27日
発行元
コズノックENT
ISBN
9791163161462
ページ数
420ページ
定価
14,000 ウォン
分野
小説

●本書の概略

わたしの保護者になってください。基本報酬は月280万ウォン──

20代の大半を刑務所で過ごし、仮釈放中の女性・ヨギョンに連絡が届いた。依頼主は、天才的な知能をもつ9歳の少女・ヘナ。児童養護施設にいたヘナは、自身と瓜二つの娘を亡くした資産家の夫妻の養子となるが、養父母はヘナの目の前で自らの命を絶った。彼らの死を隠しながらひとりで生きる決意をしたヘナが、計画に必要な大人として雇ったのがヨギョンだった。ヨギョンはヘナに、12歳で母親が蒸発してから天涯孤独だった自身を重ねる。

一方、薬物中毒で亡くなったはずの母・ミギョンについて「あなたの母親は殺されました」というメッセージが届く。ミギョンを蔑みながらも見え隠れする叔母と祖母の存在、死んだミギョンの傍らにいた赤ん坊、ヨギョンに突如届いた大金など、謎は次々と浮かび、周囲の人物らも巻きこみながらヨギョンを翻弄する。
やがてたどり着いたのは、ヨギョンの生みの親が叔母だということと、自殺したヘナの養母であるイネがミギョンに代理母出産を依頼し、その際に誕生した双子の片割れがヘナだという事実だった。感情のもつれからミギョンを殺したイネは子を1人だけ連れ去っており、それが亡くなった娘だった。そして様々な謎の中心にいたのは、養母の死後にそれらの事実を知ったヘナだった。

賢くも幼いヘナが抱えるすべての秘密を知ったヨギョンは、誰にも護られず、顧みられなかったヘナを労わる。そしていびつな絆をもつ“姉妹” は人々の前から姿を消した。

●目次

面接 / 提案 / 業務 / 謝罪 / ヘリテージ / 母さん / 痕跡 / 展示 / 監視 / 日常 / 疑心 / 軽蔑 / 再会 / 恐怖 / 養子 / 蒸発 / 端緒 / 視線 / 補償 / 家族 / 虐待 / 血筋 / 姉妹 / H.N / 解雇 / 実行 / 実体 / 決定 / 侵入 / 油断 / サンタ / イネ / 質問 / イブ / あの日 / 涙 / 目撃

●日本でのアピールポイント

本作品は、ジャンル小説の専門出版社・コズノックENTのミステリー/サスペンス小説シリーズ「Kスリラー」として刊行された。同シリーズからは、イ・ドゥオン著『あの子はもういない』が邦訳出版されている(小西直子訳、文藝春秋、2019年)。
主人公のヘナとヨギョンを軸に、視点と場面とが次々と変わりながら謎が重なっていく展開に、ページを進める手が止まらなくなる。映画シナリオ脚色の経歴をもつ著者ならではの力量ともいえそうだ(出版社の公式ブログによると、本作は2021年4月時点で、ドラマ制作契約も結ばれたとのこと)。養子縁組など、韓国社会になじみの深いエッセンスも盛り込まれているが、全体的には、注釈等をさほどつけなくても読みやすいだろう。
ミステリージャンルの小説やマンガのファンに広くすすめたい、エンターテインメント作品だ。

(作成:北澤慶)

ピョン・ジアン
大学で映画演出と美学を専攻。現在、映画シナリオ脚色、企業ブランディング映像制作、ポットキャスト運営などをしながら中国・韓国で作品活動を行っている。『誰にも護られない』が初めてのミステリー・スリラー小説となる。