●本書の概略
「私はなぜ文学者なのか」というお題について、現代の韓国を代表する文学者71人が綴ったエッセイ集。2002年3月から2003年10月までの間、『韓国日報』に連載されていた記事を再編集して書籍化した。自らの率直な言葉で綴っているため、どの内容もとても興味深く、幼い頃から文章を読み書きすることが好きだったから、文学がむしろ私を選んだから、何かを記録したかったから等、執筆の理由も71人様々だ。私たちが普段読んでいる文学の著者の背景を知ると、作品そのものを読むだけでは得られないような文学の奥深さに触れることができる。
●日本でのアピールポイント
1人あたり2,3ページで綴られた短編エッセイ集のような構成であるため、文学書を韓国語で読むことに抵抗感のある人や、本書に登場する文学者について、初めて名前を聞くという人でも気軽に読むことができる。執筆者が文学者であるがゆえ、エッセイの中には文学的な表現が多々登場するが、そういった韓国語の文学的表現を勉強したい人にもおすすめの一冊である。最終ページには、71人の文学者全員の略歴や代表作品が掲載されているため、エッセイを読んで気になった人の作品を探してみるのも面白いだろう。また、自分が知っている文学者がどのような背景を持っているのか知ることで、次に作品を読むときに以前とは異なる視点で作品を楽しむことができるかもしれない。韓国での出版が2004年ということもあり、登場する文学者は新進気鋭の作家たちではないが、文学の入門書のような感覚で読んでも良いだろう。
作成:上坂さつき