料理はカンよ(요리는 감이여)

原題
요리는 감이여
著者
51人の忠清道のおばあちゃんたち
出版日
2019年5月19日
発行元
チャンビ教育
ISBN
9791189228484
ページ数
232
定価
17,000ウォン
分野
実用、エッセイ

●本書の概略

忠清南道(チュンチョンナムド)教育庁生涯教育院が主催した「世代共感人生レシピ」プログラムから生まれた書籍。ハングルの読み書きができなかった忠清道のおばあちゃんたちが文字を勉強し、いつも作っている料理のレシピを自らハングルで書いたものに、地域の学生がおばあちゃんたちにインタビューを行って似顔絵や料理イラストを追加、一冊の料理レシピ本として出版したものだ。地域の学生だけでなく、彼らの両親、作家、教授、編集者ら37名が才能寄付という形でボランティア参加しており、各世代の協力によって完成した料理本となっている。

51名の忠清道のおばあちゃんたちがひとつずつ自慢の料理を紹介、自筆のハングルで書かれたレシピに、学生たちが料理の手順をひとつひとつイラストで描いている。それぞれの料理にはおばあちゃんたちの似顔絵と簡単なプロフィール、紹介する料理にまつわるエピソードが忠清道の方言で綴られており、料理に込められた愛情、おばあちゃんたちが生きてきた人生までが伝わってくる。キムチやチゲなどの基本的な料理から、マクワウリの漬け物、マナガツオの炒め物など忠清道の郷土料理まで、おばあちゃんたちの人生の喜怒哀楽が詰まった韓国料理レシピ本。

●目次

第1部:キムチと漬け物……この年になればもう目分量で漬けても、とんでもなくおいしくなるよ

愛2部:汁物、チゲと常備菜……料理はレシピ通りに作るんじゃなくて、感覚で作るものよ

第3部:おかず……多少手間がかかっても子どもに食べさせるものはちっとも大変と思わないね

第4部:おやつ……餅は蒸気をうまく逃がしてこそモチモチするもんさ

付録:おばあちゃんが教えてくれた季節を感じる旬の材料 / おばあちゃんの料理語辞典

●日本でのアピールポイント

韓国では高齢者の非識字者率が高く、中でも古くから続く家父長制社会のため女性の非識字者率が高いことが社会問題となっており、全国各地で高齢者向けのハングル教室が開かれている。そんなハングル教育プログラムの一環から生まれたのが本書籍だ。2020年1月第60回韓国出版文化賞で編集部門賞を受賞、文在寅(ムン・ジェイン)大統領も自身のフェイスブックで「おばあさんたちの向学心に触れて胸が熱くなった」と紹介し、“大統領の推薦図書”として話題になった。

基本的な白菜キムチやキムチチゲ、ケランチム(卵蒸し)から、水正果(スジョンガ)やドーナツといったデザートまで、多彩な料理レシピが忠清道の方言で紹介されており、学生たちが描いた料理手順のイラストには標準語のレシピも載録されているので、方言がわからなくてもレシピを楽しめるようになっている。また、日本生まれのチュ・ミジャおばあちゃんが「3歳で韓国に渡り、朝鮮戦争で両親を亡くし、ひとり生き残った」と人生を振り返り、育った寺で教わった「シッケ(お米のジュース)」の作り方を紹介しているように、各レシピとともに綴られるおばあちゃんたちが生きてきた人生を読むと目頭が熱くなる思いがする。

家めしが主流となり男女問わず料理ブームの昨今、韓国料理に挑戦する人も多い。日本人向けにアレンジされた韓国料理ではなく、おばあちゃんたちが実際に50年近く作ってきた料理レシピで本格的かつ本場の韓国料理を満喫してみるのもオススメだ。

作成:大森美紀

51人の忠清道のおばあちゃん
平均年齢75歳、忠清道に住む51人のおばあちゃん。