慰藉(다독임)

原題
다독임
著者
オ・ウン
出版日
2020年3月28日
発行元
ナンダ
ISBN
9791188862658
ページ数
280
定価
14,000ウォン
分野
エッセイ

●本書の概略

とろんとした優しさで癒してくれる詩人オ・ウンの「心」をうなずかせるエッセイ集!

詩人オ・ウンが2014年10月から2020年3月に渡って韓国日報と京郷新聞に掲載したエッセイから78編をセレクト。これに『大山文化』に掲載された1編を追加し、発表時期に沿って並べかえたエッセイ集。

2016年に書かれた「理由ある余裕」は高校の国語教科書にも紹介されており、この6年間に起こった歴史、経済、文化の変化について、様々な事件や出会いと別れなどを詩人オ・ウンの目線から綴っている。

前作のエッセイ集『君と僕と黄色』では“色”をテーマにしていたが、本作では“日常”をテーマに置き、正直かつ優しい視線から“日常”を見つめ、彼が得意とする隠喩や比喩、象徴など言葉に関する様々な技を駆使しながら、日々の中で感じたことや平凡な瞬間さえも特別な瞬間として蘇らせる。

オ・ウンは前書きでこう述べている。「何よりも父親がくれた言葉がエッセイの指針になった。“ウンや、新聞に載る文章というのは性別や年齢に関係なく誰にでも読める文章だろう? 今回のはちょっと難しかったよ”。ひと月に1度掲載される息子の文章を誰よりも待ち望んでいた父親だった。それ以降、私は、私の中にあった驕りを戒めようと心がけた。父の言った“誰にでも読める文章”には“誰もが読んで理解できる文章”という意味が込められていたのだ」この本を読むことでオ・ウンがその時々に感じたことを彼と目線の高さや歩幅を合わせて感じることができ、背中を優しくトントンと撫でてくれるような優しい気持ちになれる一冊。表紙の絵は画家シン・ソヨンの『君と一緒に』。

●目次(主なタイトルを抜粋)

2014年(話したい人と聞きたい人/ひとりでするほうがよいこと/よりしっくりくる表現)

2015年(記念日の翌日を記念すること/福々しい想像/間に合わせることから満たすことへ )

2016年(人生という形式と希望という実質/私は覚えておくために投票に行く/誰かが投げかけた質問が私の午後を満たしていく)

2017年(ひと言と余計なひと言/悲しいけれどいいこと/クソオヤジは自分がクソオヤジであることを知らない)

2018年(初心/詩を読む理由/“待つ”という動詞が合っているようだ)

2019年(私の人生に突破口を開く小さなもの/使っていました/親愛なる、親愛なる)

2020年(大人になろうと思って?/一度はあった、こんなこと/慰藉は安寧)

●日本でのアピールポイント

韓国人の詩好きは有名だ。ドラマなどでも主人公が好きな人に詩集をプレゼントする場面がよく登場する。そんな詩の世界に、数年前から新しい一派が現れた。2000年半ばに登場した未来派の次世代といわれる“ポスト未来派”の詩人たちだ。韓国現代詩の “第7世代”ともいえる“ポスト未来派”詩人の中で比較的年齢の若い詩人がオ・ウンである。韓国の人気ラッパー、マッドクラウンがリスペクトする詩人として挙げており、SanE(サニ)とのコラボでオ・ウンのエッセイ集にインスパイアされた楽曲『ノラン・ナラン・ノラン(君と僕と黄色)』(Butterfly)を発表している。

ラッパーたちに愛される言葉遊びの天才と呼ばれるオ・ウンの最新エッセイ集には、韻を踏んだり、ダブルミーニングを利用したりしつつ韓国独特の素晴らしい表現がたくさん詰まっている。昔から使われている慣用句について綴った「もっとしっくりくる表現」や、誤用が増えているという“間違える”と“違う”の表現について書いた「違いと間違い」など韓国語学習者に役立つ話題もあり、韓国語も合わせて紹介するなどの工夫ができればより面白く読める本になるだろう。

また、セウォル号の悲劇を繰り返してはいけないと心に刻む「私は覚えておくために投票に行く」、父親が余命宣告を受けた時に綴った「“愛してる”という時が来たようだ」、コロナ禍で大変な状況での挨拶を“お元気でしたか?”でよいのかという疑問を綴った「慰藉は安寧」など、困難な状況に陥ったときに言葉が持つ重さ、大切さを気付かせてくれるエッセイも多い。また、読書家としても有名で、ペク・スリンの小説について書いた「親愛なる、親愛なる」、現役医師キム・ソニョンのエッセイ『失っても忘れないものたち』を扱った「泣いてもいいよ」など書籍に関する話もあり、次にまた読んでみたい本がどんどん増えてしまう本でもある。

作成:大森美紀

著者:オ・ウン
1982年、全羅北道生まれ。『現代詩』2002年春号でデビュー。ソウル大学社会学科を卒業後、KAIST文化技術大学院で修士号を取得。詩集『ホテル・ターセルの豚』『私たちは雰囲気を愛する』『ユーからユーへ』『左手は心が痛い』『私は名前があった』、エッセイ集『君と僕と黄色』を発表している(以上、全て未邦訳)。朴仁煥文学賞、具象詩文学賞、現代詩作品賞、大山文学賞を受賞。 韓国のオンライン書店“イエス24”が制作するポッドキャスト番組『チェキラウト』で“オ・ウンのオンギチョンギ”と題し、オススメ書籍を紹介している。