20歳で詩人となり、40年以上韓国の詩檀の第一線で活躍し続けているアン・ドヒョンの詩選集です。これまでに紡がれてきた10冊の詩集から選りすぐった66篇で、時代とともに変化する詩人の声をしっかりと聞くことができる一冊となっています。さらに詩人の来歴や、これまでに発表された著書について詳しく紹介している巻末の編訳者解説が、私たちに詩の味わいをさらに深めてくれるようです。
編訳者の五十嵐真希さんからも推薦のメッセージを頂戴しました。
アン・ドヒョンさんの詩業を一望できる日本語版オリジナル詩選集をつくりました。アン・ドヒョンさんにとって詩は遠くにあるものではなく近くにあるもの。研ぎ澄まされた感性と日常の言葉で綴られた詩は情景が豊かで、読むとすぐに絵画が浮かびます。小さなものに眼差しがあり、やさしくあたたかい。たとえば、次のような詩。
アマドコロの新芽は/新芽の頭の力だけで/土を割り 外に顔を出したのではない//土が自分の体の表面を開き どいてくれたので/あのように このように/うす緑の芽が世にあらわれたということ//(中略)/アマドコロは申し訳なくて 緑の葉で覆いをつくる (「どいてくれるということ」部分)
このようなやさしさの詩のほかに、抵抗の詩や食べ物の詩などあらゆる詩を収録しました。さまざまな対立が激化し、混沌としている今。アン・ドヒョンさんの詩はまさしく今の時代のためのもの。じっくり味わっていただければ幸いです。
(五十嵐真希)
『あさみどりの引っ越し日』(アン・ドヒョン/著、五十嵐真希/編訳、クオン)

