『詩人 白石 (ペクソク)  寄る辺なく気高くさみしく』(アン・ドヒョン/著 五十嵐真希/訳 新泉社)

『詩人 白石――寄る辺なく気高くさみしく』(アン・ドヒョン著、五十嵐真希訳、新泉社)が刊行されました。このコーナーを担当している私、五十嵐が翻訳に携わりましたので、ご紹介させていただきます。

原著のタイトルは『白石評伝』。白石とは、1930年代後半から40年代前半に活躍した詩人です。分断後は故郷のある北朝鮮に残り、体制になじめずに筆を折りました。尹東柱(ユンドンジュ)などと並び、現代韓国で多くの支持を集め続ける詩人で、「詩人たちの詩人」と評されるほど人気があります。方言や古語を巧みに使った詩や、人生の孤独感や悲哀を詠った詩を多く残しました。白石の詩にある悲哀は、いまを生きる私たちも十分に共感できるものです。詩人だけでなく、ハン・ガンやシン・ギョンスク、キム・ヨンスなどの小説家からも高い評価を受けています。

著者は詩人のアン・ドヒョンです。白石を学生の頃から敬愛する彼が、白石の生涯にわたる詩・随筆とその作品世界の魅力を余すところなく伝え、波乱に満ちた生涯を緻密に再現しました。アン・ドヒョンも韓国で人気の詩人です。「練炭ひとつ」や「君に質す」など、練炭を素材に、だれかのために熱く生きることを詠った詩がドラマや映画でよく使われています。日韓で話題となったドラマ「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」でも「練炭ひとつ」が朗読され、多くの視聴者の心をつかみました。

著者は、白石の生涯を介して日韓関係史や文壇史も綴りました。読者の方々に当時の空気を感じていただきたく、訳註として歴史的事項の説明や、登場する文筆家の解説などを載せました。詩が好きな人も、歴史が好きな人も興味深くお読みいただける一冊となっています。(五十嵐真希)

「聴いて、読んで、楽しむ★K-BOOKらじお」第17回目のゲストとして、詩人白石との出会いについてや、白石が生きた時代を読者に伝えるべく工夫した点などをお話し致しました。👉Apple 👉Spotify 👉 YouTube

◆『詩人 白石 (ペクソク)  寄る辺なく気高くさみしく』刊行記念イベント◆
「白石を知る、語る」10/7(金) 19時~/ CHEKCCORI(オンライン) / 登壇者:きむ ふな,五十嵐真希

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『詩人 白石 (ペクソク)  寄る辺なく気高くさみしく』(アン・ドヒョン/著 五十嵐真希/訳 新泉社)