『ある日、僕が死にました』( イ・ギョンヘ/著、小笠原藤子/訳、KADOKAWA)

韓国で2004年に出版され、5か国で累計40万部を突破したロングセラーの青春小説『ある日、僕が死にました』( イ・ギョンヘ/著、小笠原藤子/訳、KADOKAWA)。まったく面識のない少年の訃報に何日も涙が止まらなかったという著者が、若くして命を落とした少年たちを想いながら書き上げた青春小説です。BTS(防弾少年団)のRMさんが楽曲のモチーフにしたとして、ファンの間で話題になりました。訳者の小笠原藤子さんからメッセージを頂戴しましたので、ご紹介します。

ユミは大人びた中学2年生。転校先で友達が出来ず、揉め事を起こし落ち込んでいたとき、友達になろうと言ってくれたジェジュン。嬉しさを素直に表現できない不器用なユミだったが、次第に2人は親しくなり、互いにかけがえのない存在となる。ところがそんな2人の未来は、ある日突然奪われてしまった。ジェジュンがバイク事故でこの世を去るという形で。
ジェジュンの死を受け入れ難いユミに、『ある日、僕が死にました』と綴られたジェジュンの日記帳が手渡される。恐る恐る読み進めると、なぜこんな言葉を書き残したのか、なぜ事故を起こしたバイクに乗ったのか、ジェジュンがユミを大切に思う気持ち、片想いの相手ソヒへの一途な恋心などが明らかになる。ユミは思いも寄らなかったジェジュンの内心に触れ、様々な感情を抱く。日記を通してユミはジェジュンを一層理解し、絶望のどん底から再生の糸口をつかんでいく。

多感な中学生の直情的な言動や粋がりは、どことなく清々しい。タイトルにある「死」という文字に、一瞬敬遠する読者もいるかもしれないが、作品全体を悲痛な空気が漂うのではなく、むしろ眩しいほどに煌めく若い生命を感じ取れる、そんな1冊だ。ジェジュンの中学生らしい葛藤の数々、ユミがジェジュンへ向ける穏やかで優しい眼差しに、むしろ心温まる思いをするのは、私だけであろうか。できれば雨の降る日に静かに読んでもらいたい。そして読み終えたら、装丁画もじっくり眺めていただけたらと思う。(小笠原藤子)

『ある日、僕が死にました』( イ・ギョンヘ/著、小笠原藤子/訳、KADOKAWA)