『続けてみます』(ファン・ジョンウン/著 オ・ヨンア/訳 晶文社)

邦訳作品が出る度に大きな話題となるファン・ジョンウンさんの大山文学賞受賞作『続けてみます』(オ・ヨンア訳 晶文社)
父を亡くした姉妹のソラとナナは、子育てを放棄している母エジャと半地下の家に住んでいます。隣に住む少年のナギと親しくなり、ナギの母に世話してもらいながら成長した姉妹。ある日、ナナが妊娠し……。何かが欠けている世の中の片隅で、それでもまわる世の中を、ソラ、ナナ、ナギの視点で語っていきます。「話してみます」「答えてみます」「続けてみます」、語り口からは生きることへの強い意志も感じられます。『ディディの傘』(斎藤真理子訳 亜紀書房)にも朝鮮戦争を生き抜いたキム・グィジャ婆さんが登場しますが、『続けてみます』でも女性たちの戦争経験が語られていて、ファン・ジョンウンさんの歴史を直視する強い姿勢も感じられる作品です。
訳者のオ・ヨンアさんからメッセージを頂戴しましたので、ご紹介します。

すでに日本でも多くの読者に愛されているファン・ジョンウンですが、この『続けてみます』は、まだセウォル号事件もキャンドル集会も起きていなかった2013年に発表された、韓国文壇におけるエポックメイキング的とも言える存在感のある作品です。
ソラとナナとナギの世界は痛みに満ちていますが、この世のどこよりもやさしくてやさしい世界でもあります。
私たちは誰もが、それぞれの生の場で何者かにないがしろにされたり、たとえ無意識だとしても、何者かをないがしろにしてきたことがあるのではないでしょうか。
韓国社会のみならず今を生きるすべての人にとって、小さなともしびとなってくれるような一冊です。どうぞ、ファン・ジョンウンが語らずして語った余白に耳を澄ましてみてください。(オ・ヨンア)

『続けてみます』(ファン・ジョンウン/著 オ・ヨンア/訳 晶文社)