『仕事の喜びと哀しみ』(チャン・リュジン/著 牧野美加/訳 クオン)

大型新人チャン・リュジンの初の短編集『仕事の喜びと哀しみ』(チャン・リュジン/著 牧野美加/訳 クオン)。
表題作が創批(チャンビ)新人小説賞を受賞し、ネットで公開されるとたちまち話題となって、出版社のサーバーがダウンするほどアクセスが集中。多くの読者の共感を得たチャン・リュジンはその後も会社勤めをしながら作品を書き続けます。今の韓国の若者の日常や人間関係を彼らと同じ目線で丁寧にユーモラスに描いた物語はみな、同じような感情を抱いた自分の経験を思い出させます。そして余韻があって、主人公のその後の物語が気になります。現在は創作活動に専念しているチャン・リュジンがこれからどのような物語を紡ぎ、私たちにどのような「読書」の喜びを届けてくれるのか、期待が膨らみます。
訳者の牧野美加さんからメッセージを頂戴しましたので、ご紹介します。

今の韓国社会や若者の姿がとてもリアルに描かれている短編集ですが、同時に、人名や地名を日本のものに変えて日本の話として読んだとしてもあまり違和感のない、普遍性のある作品だとも言えるでしょう。身近な物語として、日本の皆さんにも気軽に読んでいただけるのではないかと思います。
8編いずれも、競争社会や就職難、性別や学歴による差別、経済格差といった厳しい社会の現実が背景として描かれています。ですが、会社員や就活生、ミュージシャンなどの登場人物たちはそうした閉塞感のある社会を現実として受け止め、自分なりの楽しみを見つけて飄々と、そしてたくましく歩んでいきます。厳しい現実とは裏腹に、その姿からは明るい光や爽やかな風が感じられます。新型コロナによる未曾有の事態に社会全体が閉塞感に包まれる今、その光や風によって、ひとときでもすがすがしい気持ちになってもらえればと思います。(牧野美加)

2021年1月26日(火)20:00~21:00 【オンライン】クオン読書クラブ―第1回『仕事の喜びと哀しみ』も開催されます。詳細はこちら

著者インタビュー動画をこちらからご覧になれます(日本語字幕)。

「ソウル国際作家フェスティバル2020」で行われた、著者と小説家の小山田浩子さんとのオンライン対談をこちらからご覧になれます(英語・韓国語字幕)。

 

『仕事の喜びと哀しみ』(チャン・リュジン/著 牧野美加/訳 クオン)