
教保文庫の2025年9月の月間ベスト10と注目の新刊情報(韓国小説)をご紹介します。9月に発売されたばかりのク・ビョンモの新作小説が初登場にして1位に輝きました。注目の新刊で詳しく取り上げています。
1位:『절창(切創)』ク・ビョンモ著(文学トンネ/2025.9.17)
2位:『혼모노(ホンモノ)』ソン・ヘナ著(チャンビ/2025.3.28)
3位:『모순(矛盾)』(ハードカバー)梁貴子(ヤン・グィジャ)著(スダ/2013.4.1)
4位:『자몽살구클럽(チャモンサルグクラブ/グレープフルーツアプリコットクラブ)』ハンロロ著(オーセンティック/2025.7.25)
5位:『양면의 조개껍데기(両面の貝殻)』キム・チョヨプ著(ラビットホール/2025.8.27)
6位:『안녕이라 그랬어(アンニョン、と言った)』キム・エラン著(文学トンネ/2025.6.20)
7位:『소년이 온다(少年が来る)』ハン・ガン著(チャンビ/2014.5.19)邦訳版『少年が来る』(井出俊作訳/クオン)
8位:『급류(急流)』チョン・デゴン著(民音社/2022.12.22)
9位:『채식주의자(菜食主義者)』ハン・ガン著(チャンビ/2022.3.28)邦訳版『菜食主義者』(きむふな訳/クオン)
10位:『나는 소망한다 내게 금지된 것을(私は望む 私に禁止されたことを)』梁貴子(ヤン・グィジャ)著(スダ/2019.4.20)
注目の新刊は以下のとおりです。
『절창(切創)』ク・ビョンモ著(文学トンネ/2025.9.17)
高齢女性の殺し屋を主人公に据えた暗黒小説『破果』(邦訳:小山内園子訳/岩波書店/2022)が映像化され話題を呼んだク・ビョンモによる新作長編小説です。孤児院で暮らす少女はある日、自分が他人の傷に触れることでその人の心を読み取れる不思議な力を持っていることに気づきます。その能力に目をつけた男・オオンは、少女を人目から遠ざけ、囲い込みながら、自らの目的のためにその力を利用しようと企てます。心を読む少女と、読まれまいとする男の対峙を通して、人は他者というテキストを読み解くことができるのかという問いが読者へ投げかけられます。
『소설 보다:가을2025(小説ポダ:秋2025)』ソ・ジャンウォン他著(文学と知性社/2025.09.11)
韓国の出版社「文学と知性社」が季節ごとに刊行している人気短編小説シリーズ。2025年秋版の本書には、日本と韓国にルーツもつ青年が「演劇教室」とそこで出会った「私」を通じてアイデンティティを模索する姿を描いた、ソ・ジャンウォンの「ヒデオ」の他、イ・ユリの「トゥジョンランド」、チョン・ギヒョンの「勉強して、そして試験を受けよう」の3編と作家のインタビューが収められています。
『연희동 러너-한 발 너머는 내가 원하는 곳으로(延禧洞(ヨニドン)ランナー~一歩先は私の望む場所へと続く~)』 イム・ジヒョン著(サンサンスクエア/2025.09.03)
就職や夢に悩む30代の女性が、ランニングを通じて自分の「速度」と「日常」を再発見する物語。著者はこれまで児童書を多数発表してきた作家ですが、「子供と大人が経験する困難は別々に存在するものではなく、つながり、重なり合っている」と語っており、本作では青年期の心の揺れが率直な筆致で綴られています。作家のチャン・ガンミョンは、「読めば誰もが元気をもらったと感じ、自分も走ってみようかな、と思うはず。心にも、体にも効く小説だ」と推薦の言葉を寄せています。(文/高上由賀)
