
教保文庫の2025年5月の月間ベスト10と注目の新刊情報(韓国小説)をご紹介します。第7位に『あまりにも真昼の恋愛』や『敬愛の心』(すんみ訳/晶文社)の著者キム・グミによる新作小説がランクインしました。注目の新刊・近刊ではNetflix (ネットフリックス)で人気を集めたドラマ「重症外傷センター:トラウマコード」の原作者、韓山李家によるSFアワード2023ウェブ小説部門大賞受賞作や、キム・チョヨプら人気のSF作家によるアンソロジー、8年ぶりとなるキム・エランの新作短編集を取り上げました。
1位:『모순(矛盾)』(ハードカバー)梁貴子(ヤン・グィジャ)著(スダ/2013.4.1)
2位:『소년이 온다(少年が来る)』ハン・ガン著(チャンビ/2014.5.19)邦訳版『少年が来る』(井出俊作訳/クオン)
3位:『급류(急流)』チョン・デゴン著(民音社/2022.12.22)
4位:『파과(破果)』ク・ビョンモ著(ウィズダムハウス/2018.4.16)
5位:『혼모노(ホンモノ)』ソン・ヘナ著(チャンビ/2025.3.28)
6位:『제16회 젊은작가상 수상작품집2025(2025第16回若い作家賞受賞作品集)』ペク・オニュ他著(文学トンネ/2025.4.2)
7位:『첫 여름, 완주 | 듣는 소설 1(初夏、ワンジュ|聞く小説1)』キム・グミ著(ムジェ/2025.05.08)
俳優パク・ジョンミンが手掛ける出版社「ムジェ」の「聞く小説」プロジェクトの第1巻です。視覚障がい者のためのオーディオブックを意識して書かれているため、地の文、ト書き、台詞で構成された、シナリオのような長編小説です。ワンジュ村を訪れた主人公のヨルメが個性豊かな村の人々と過ごす夏のひとときが描かれています。
8位:『홍학의 자리(紅鶴の場所)』チョン・ヘヨン著(エリクシル/2021.7.26)
9位:『채식주의자(菜食主義者)』ハン・ガン著(チャンビ/2022.3.28)邦訳版『菜食主義者』(きむふな訳/クオン)
10位:『작별하지 않는다(別れを告げない)』ハン・ガン著(文学トンネ/2021.9.9)邦訳版『別れを告げない』(斎藤真理子訳/白水社)
注目の新刊・近刊は以下のとおりです。
『A.I. 닥터(A.I.ドクター)』全5巻 韓山李家著(サンサン/2025.5.15)
Netflix (ネットフリックス)で人気を集めたドラマ「重症外傷センター:トラウマコード」の原作者、韓山李家による第10回SFアワード2023ウェブ小説部門大賞受賞作が書籍化されました。NAVERで6,400万ダウンロードを記録した話題作。内科医、イ・スヒョクの脳に医療A.I.バルーダが定着。最高の内科医になるために人間とA.I.コンビが成長していくストーリーです。
『마침내, 안녕(ついに、さよなら)』ユウォル著(ソサウォン/2025.5.26)
電子書籍のサブスクリプションサービス「ミルリの書斎」で先行公開され、多くの注目を集めた作品です。平穏無事に暮らすことだけを望みながら家庭裁判所の調査官として働く主人公のドヨンが、法廷で出会う人々の人生に触れながら、自身の過去と向き合い再生していく物語です。
『소설 보다:여름2025(小説ポダ:夏2025)』キム・ジヨン他著(文学と知性社/2025.06.10)
韓国の出版社「文学と知性社」が季節ごとに刊行する短編小説シリーズで、2025年夏版の本書にはキム・ジヨンの「무덤을 보살피다(墓を見守る)」、イ・ソアの「방랑, 파도(放浪、波)」、ハム・ユニの「우리의 적들이 산을 오를 때(敵が山を登るとき)」の3作と作家のインタビューが収録されています。
『토막 난 우주를 안고서(砕けた宇宙を抱いて)』キム・チョヨプ、チョン・ソルラン他著(ハッブル/2025.6.18)
韓国科学文学賞10周年を記念して作られたSFアンソロジーで、同賞の受賞歴がある5名の作家によって執筆されました。この作品集は特定のテーマを設けず作家が自由に執筆したものですが、結果として「死の向こう側と愛」が共通して描かれています。キム・チョヨプの「雨雲を追って」では、亡くなったルームメイトから届いた追悼式の招待状をめぐり、友人が果たして本当に亡くなったのか、それとも異世界へ旅立ったのかを探る物語が展開されます。
『안녕이라 그랬어(アンニョン、と言った)』キム・エラン著(文学トンネ/2025.6.20)
邦訳本も多数出版されているキム・エランの、『外は夏』(古川綾子訳/亜紀書房/2019)以来8年ぶりの新作短編集です。2022年にキム・スンオク文学賞優秀賞を受賞した「ホームパーティー」をはじめ7編の物語が収められています。共通のテーマは「空間」で、登場人物が他者の空間を訪れることで生じる葛藤や関係性の変化が描かれています。(文/高上由賀)