教保文庫、1月の月間ベストと注目の新刊(韓国通信)

教保文庫の1月の月間ベスト10(国内小説)と注目の新刊情報をご紹介します。ウン・ヒギョンやチョ・ナムジュの小説集、BTSの歌にまつわる詩人ナ・テジュのエッセイ、映画監督ユン・ガウンのエッセイなど新作も盛りだくさんです。

1位:『불편한 편의점(不便なコンビニ)』(15万部記念ウィンターエディション)キム・ホヨン著(ナムヨップウィジャ/2021.4.20)
2位:『달러구트 꿈 백화점(ダラグート 夢の百貨店)』(100万部記念合本版)イ・ミイェ著(ファクトリーナイン/2021.12.25)
3位:『달러구트 꿈 백화점(ダラグート 夢の百貨店)』イ・ミイェ著(ファクトリーナイン/2020.7.8)
4位:『달러구트 꿈 백화점2(ダラグート 夢の百貨店2)』イ・ミイェ著(ファクトリーナイン/2021.7.27)
5位:『밝은 밤(明るい夜)』チェ・ウニョン著(文学トンネ/2021.7.27)
6位:『옷소매 붉은 끝동. 1(袖先赤いクットン)』カン・ミガン著(チョンオラム/2017.4.6)
ジュノが除隊後復帰作として主演した同名のテレビドラマが昨年末から放送されていたことで、原作も再び注目を集めています。日本でも春から『赤い袖先』というタイトルで放送予定です。
7位:『지구 끝의 온실(地球の果ての温室)』キム・チョヨプ著(ジャイアントブックス/2021.8.18)
8位:『완전한 행복(完全な幸福)』チョン・ユジョン著(ウネンナム/2021.6.10)
9位:『아몬드(アーモンド)』ソン・ウォンピョン著(チャンビ/2017.3.31)
10位:『므레모사(ムレモサ)』キム・チョヨプ著(現代文学/2021.12.25)

注目の新刊は以下のとおりです。
『어서 오세요, 휴남동 서점입니다(いらっしゃいませ、ヒュナム洞書店です)』ファン・ボルム著(クレイハウス/2022.1.17)
ソウルの住宅街の路地にヒュナム洞書店をオープンしたヨンジュ。当初は空虚な心を抱えていたものの、店で本を読みながら過ごすうちに心が満たされ、自身が健康になっていくのを感じる。やがて店は、バリスタや作家、人生に退屈する高校生とその母親など、心に傷や希望を抱く客たちにとっての癒やしの空間となっていく、という物語です。思いやりや親切、適度な距離を保っての友情、緩やかな連帯など、生きていくうえで必要な多くのことが描かれています。電子書籍の出版と同時にベストセラーとなり、多くの要望に応えてこのたび紙の本でも出版されました。

『장미의 이름은 장미(バラの名前はバラ)』ウン・ヒギョン著(文学トンネ/2022.1.18)
著者の6年ぶり、7作目となる小説集。「『他人をどのように理解すればいいのか』という人間関係にまつわる根源的な問題を、作家特有の個性的で爽やかな文体で表現した」との評で呉永寿文学賞を受賞した表題作を含む、4編の連作小説を収録しています。表題作は、離婚して単身ニューヨークに向かった45歳の「わたし」と語学学校で出会ったセネガルの大学生の物語です。

『서영동 이야기(ソヨン洞の物語)』チョ・ナムジュ著(ハンギョレ出版社/2022.1.19)
昨年夏に出版されたテーマ小説集(アンソロジー)『시티 픽션(シティーフィクション)』の収録作「봄날아빠를 아세요?(ポムナルアッパをご存じですか?)」に始まる連作小説。架空の街ソヨン洞を舞台に7編の物語が収められています。不動産問題を通して、日々「階級の階段」を上り下りしながら生きる現代人の奮闘や欲望を描きます。

『호수의 일(湖のこと)』イヒョン著(チャンビ/2022.1.27)
『1945,鉄原』(梁玉順訳/影書房)などで知られる著者の新作長編です。表面的には友人たちと仲良く過ごす平凡な高校生ホジョンは、幼いころの記憶のせいで家族とのあいだには距離がある。夏休み明けに転校してきたウンギに自分と同じく「人には言えない何かを抱えている」ことを感じ、心を開くようになるのだが……という話です。ソン・ウォンピョン著『アーモンド』やパク・オニュ著『ユ・ウォン』に続く、まぶしい成長物語と評されています。

『훌훌(フルフル)』ムン・ギョンミン著(文学トンネ/2022.2.7)
第12回文学トンネ青少年文学賞大賞受賞作。産みの母親を知らず、自分を養子として迎えた母親にも捨てられ、血縁のない高齢男性と2人で暮らす17歳のユリ。大学生になったら、過去と決別し、家のこともきれいさっぱり忘れて一人で生きていこうと思っていたが、ある日突然、自分を捨てた母親の訃報が舞い込む。葬式をあげ、血のつながらないきょうだいとも同居することになったユリの気持ちに、心の厚い壁にヒビが入るように変化が起こりはじる、という物語です。タイトルの훌훌(フルフル)は「すいすい、ばたばた、ぐいぐい、めらめら、きれいさっぱり(忘れる、吐き出す)」などさまざまな場面で使われる副詞です。

『불장난(火遊び)』(第45回李箱文学賞作品集2022年)ソン・ボミほか著(文学思想/2022.1.16)
ソン・ボミの大賞受賞作「火遊び」と自薦作「임시교사(臨時教師)」のほか、優秀作を受賞したカン・ファギル、ペク・スリン、ソ・イジェ、ヨム・スンスク、イ・ジャンウク、チェ・ウンミの作品が収録されています。

『작은 것들을 위한 시: BTS 노래산문(小さきものたちのための詩:BTSの歌のエッセイ)』ナ・テジュ著(ヨルリムォン/2022.1.20)
BTSの歌の歌詞とそれぞれにまつわる著者のエッセイが収録されています。詩人である著者はこれを書きながら、BTSの歌には「個別性と普遍性」「マクロとミクロ」が共存していることに気づいたそうです。憂うつな気持ちを抱えている人、自尊心が傷ついている人、何かを始めようとしている人、遠くに行きたいと思っている人に特に読んでもらいたいと言います。著者の邦訳本は『愛だけが残る』『花を見るように君を見る』(ともに黒河星子訳/かんき出版)に続いて『あの人ひとりがこの世のすべてだった頃』(藤田麗子訳/KADOKAWA)も間もなく刊行予定です。

『호호호(ほほほ)』ユン・ガウン著(マウム散策/2020.2.5)
映画『우리들(The World of Us)』『우리집(The House of Us)』などで知られるユン・ガウン監督のエッセイ集。「好きなものを好きだと言うこと」、「冒険はそうやって始まった」、「ただ歩くために」の3部構成、計17編のエッセイには、自分の好きなもの、幼いころの思い出、監督になろうと奮闘していたころの話などが綴られています。笑い声のようでもあるタイトルは、昔友人から「普通、人には호불호(好不好=好き嫌い)があるけど、あなたには호호호(好好好=好きなものばかり)があるみたいね」と言われたことにちなんだものだそうです(文/牧野美加)。