絵本で知る5月18日

光州民主化抗争を『少年が来る』(ハン・ガン/著 井手俊作/訳 クオン)などの小説や、「タクシー運転手 約束は海を越えて」などの映画で初めて知った人も多くいらっしゃるかと思いますが、今日はこの民主化抗争をテーマとした絵本を2冊紹介します。
まず、『오늘은 5월 18일(今日は5月18日)』。光州民主化抗争を取りあげた初めての絵本です。ひとりの少年の視点から、当時の騒然とした光州の様子、民主化運動に飛び込んでいった人々とその帰りを待つ家族の不安、民主化運動を武力で鎮圧しようとする国家から銃を向けられた人々の悲しみが描かれています。
作者のソ・ジンソンは、高校3年生のときに光州民主化抗争を経験します。民主化を求めて立ち上がった人々の死と、残された家族たちの悲しみを目のあたりにし、心に深い傷を残しました。大学で絵を学んだ後、ソウルの出版社で雑誌などに絵を描いていましたが、長い間心にしまい込んだままの経験を絵本にしたいと思っていたそうです。
家族を銃から守ろうと、大人が布団を釘で窓に固定させようとするそばで、子どもが銃のおもちゃで無邪気に遊ぶ様子を描いた場面には、悲しみがこみ上げてきます。

2冊目は、『운동화 비행기(運動靴の飛行機)』です。光州の貯水池や裏山で友だちと遊んでいる最中に、戒厳軍による突然の銃撃で命を落とした二人の少年の実話をモチーフにして描かれました。
作者のホン・ソンダムは、朝鮮大学美術科を卒業してすぐに光州民主化抗争を経験し、以後、光州の五月民衆抗争連作版画『夜明け』を発表するなど粘り強く光州を語り続けています。また投獄中の1990年には、国際アムネスティによって「世界の3大良心囚」に、2014年には米国の外交専門誌『Foreign Policy』によって「世界を揺り動かした10人の思想家」に選ばれました。
日本で出版された書籍に、『光州「五月連作版画-夜明け」ひとが ひとを 呼ぶ』(夜光社2012)、『東アジアのヤスクニズム-洪成潭〈靖国の迷妄〉』(唯学書房2016)などがあります。(文/五十嵐真希)