【K-BOOK振興会だより】イベント盛りだくさん/チョン・ボラの新作にチョン・セランによる歴史ミステリーも紹介

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K-BOOK振興会便り  2025年3月号        http://k-book.org/
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「光州5.18」と言えば、最近では映画『タクシー運転手 ~約束は海を越えて~』をおすすめしてきましたが、
4月4日に公開予定の『1980 僕たちの光州事件』がとても気になっています。
こちらは「小さな幸せを夢見た家族をのみ込んだ大きな悲劇」を描いているのだそう。
ハン・ガン著『少年が来る』を読んだ人にも、まだこれから読む人にもまたまた見て欲しい作品になりそうです。(さ)
http://klockworx.com/movies/1980/

◆◇今月のTOPIK◇◆

●イベント情報●

3月7日(金)/チェッコリ&オンライン
祝! 重版記念 「虎に翼」の崔香淑の人生を軸に 『女性たちの韓国近現代史』を読んでみたら
登壇者:崔誠姫
https://chekccori250307.peatix.com/

3月7日(金)/本屋B&B &オンライン
「翻訳でひらく となりの国の文学、社会、人」
『〈弱さ〉から読み解く韓国現代文学』(NHK出版)刊行記念
登壇者:小山内園子、斎藤真理子
https://bb250307a.peatix.com/

3月15日(土)/青山学院大学
『青山学院で学んだ韓国朝鮮の文学者たち』出版記念イベント「青山学院出身 近代韓国文学者たちの生の軌跡と文学」
登壇者:小松靖彦教授、熊木勉教授、韓京子教授、沢知恵ほか
https://www.aoyama.ac.jp/post02/2024/event_20250218_01

3月20日(木・祝)/チェッコリ&オンライン
『美を感じる』出版記念イベント―共訳で得られたこと、訳して感じた美とは?
登壇者:伊賀山直樹、村山哲也
https://chekccori250320.peatix.com/

3月21日(金)/チェッコリ&オンライン
著者・原智弘先生が語る「Y君の目に映った1930年京城」
登壇者:原智弘
https://chekccori250321.peatix.com/

3月28日(金)/チェッコリ&オンライン
『美人まで1000段』刊行記念トークイベント「ソウルで米国人女性が体感した『韓流美』のパワー」
登壇者:金井真弓、桑畑優香
https://chekccori250328.peatix.com/

◆◇日本語で読みたい韓国の本◇◆

<エッセイ> たかが「オタ活」が私たちを生かしてくれる(그깟 ‘덕질’이 우리를 살게 할 거야)
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●数多の日本文学を韓国語に翻訳してきた翻訳家イ・ソダムのエッセイ

日本語翻訳家らしく何よりも本を愛する彼女のもうひとつのアイデンティティは、推し活(オタク)だった。
本書で彼女は、20年以上にわたりあるアイドルのファンだったこと、日本のある声優を好きになったことがきっかけで日本語翻訳家となったこと、
そして堂々と推し活をするために一生懸命生きるようになったと告白している。
自分が好きなものに本気で真正面から向き合うだけで、人生がどれほど特別になるかを軽快な文章で楽しく伝える。
https://k-book.org/yomitai/250203/

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<小説> 軽い昼食(가벼운 점심)
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●四季の小説家と呼ばれる、チャン・ウンジン作家の4冊目の短編集

チャン・ウンジンの小説に季節は欠かせないもので、表題作「軽めの昼食」をはじめ6つのストーリーには春・夏・秋・冬の四季が全て登場し、その特徴がさらに際立つものになっている。
本書では「軽い昼食」以外、猫が登場し人物の感情や行動に影響を与えている。動物も社会の構成員であり我々の側にいる生命体だというチャン・ウンジンは必要に応じてなるべく小説に登場させるという。
猫によって変わる、猫に対する、人物の感情の変化を読み解くこともできる作品となっている。
http://k-book.org/yomitai/250210/

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<エッセイ> ぼんやりした自分を耐え抜く方法(흐릿한 나를 견디는 법)
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●インスタグラムのフォロワー8万人という人気のエッセイトゥーン作家によるエッセイ

エッセイトゥーンとは、日常で感じた考えや感情を基にエッセイを作成した後、その内容をいくつかのカットに分けた後、カットごとに絵を描いて漫画形式で表現するもの。それをインスタグラムで公開し、まとまった作品は書籍化している。
そんなエッセイトゥーン作家の一人、スクの2冊目の作品である。
キャラクターの「무명(ムミョン)=無名/名無し、を意味する」は、悩み、挫折し、失敗し、様々な経験をしながら、自分なりの問題解決の方法や、日々を生き抜く方法を見つけ出していく。
http://k-book.org/yomitai/250217/

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<絵本> 悩みが悩みだ(고민이 고민이야)
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●韓国語の同音異義語と多義語を盛り込んだ言葉遊び絵本

悩みの多い4人家族は、今日もいろいろなことで悩んでいる。ジュースを買いに行こうかどうか悩んでいるお母さん、
このまま宿題をせずに寝てしまおうか悩んでいる息子、子どもたちを無理やり引き離してケンカを止めようか悩んでいるお父さん、
シャワーを浴びようか悩んでいる娘…。日常生活の素朴な場面がコミカルな絵で描かれる。悩みの解決法が提示されるページのファンタジーな表現も面白い。
http://k-book.org/yomitai/250224/

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◆◇ 韓国の出版・本屋事情 ◇◆

教保文庫、1月の月間ベストと注目の新刊(韓国小説)
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ハン・ガン作品と昨年刊行の作品が10位までを占めましたが、1月に刊行された作品も20位圏内にランクインしており、今後の動きに注目です。
注目の新刊で今月18位にランクインしたSF作家チョン・ボラの新作と、20位にランクインしたチョン・セランによる歴史ミステリーを紹介しています。
http://k-book.org/publishing/20250209/

教保文庫、1月の月間ベストと注目の新刊(エッセイ)
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カカオトークで人気のキャラクター「いびつなクマ」のマンガ3作目が9位にランクインしました。
注目の新刊では、パク・ワンソによる旅行エッセイを紹介しています。
http://k-book.org/publishing/20250206/

◆◇1月のK-BOOKらじお◇◆

#133 可愛いだけじゃない信念が伝わるエッセイを届けたい|わたし、これ担当しました
https://k-book.org/news/radio_133/

#134 海外に友達ができて世界が広がる!インディーズミュージシャンとの繋がりも|わたし、これ推してます|ポポタム大林さん
http://k-book.org/news/radio_134/

#135 レンガ本を読む企画に、誰かの初めてが読める小説&エッセイ、そして雑誌専門書店|ソ・ハナの韓国の本、ウロウロてくてく
http://k-book.org/news/radio_135/

#136 映画公開間近のチャン・ガンミョン作品やミレニアム世代に響くチョン・セラン作品など|わたし、これ読みました
http://k-book.org/news/radio_136/

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_____ミニコラム〈五十嵐真希の小さな翻訳恋物語〉_______

♯2 ニセモノ?

白石(ペク・ソク/1912~1996)という詩人がいます。代表作のひとつ「僕とナターシャと白いロバ」はミュージカルにもなり、「詩人のなかの詩人」と言われるほどとても人気がある詩人です。その白石の作品に「雨」という短い詩があります。
「アカシアの木々はいつ白い藁座を敷いたのか/どこからかむっとした干潟の臭いがしてくる」(拙訳)というものです。
「干潟の臭い」の原文「개비린내(発音:ケビリンネ)」については「雨に濡れそぼった犬の臭い」という説もあります。

さて、この詩の「アカシア」、原文もこのまま「아카시아」なのですが、みなさんはどの植物を頭に思い浮かべますか?
ちょうどこれからの季節に、小さくて黄色い丸い花を咲かせる植物? それとも、初夏に白い花を咲かせて、ミツバチがたくさん集まってくる植物?
日本でアカシアというと前者の植物をさします。ミモザと言われることもありますが、この詩のアカシアは後者で、日本名は「ニセアカシア」または「ハリエンジュ」。

それでは、なぜ私が「ニセアカシア」と訳さずに「アカシア」としたのか。この訳詩は『詩人白石――寄る辺なく気高くさみしく』(アン・ドヒョン著、新泉社)に載せたものですが、訳したときに「ニセアカシア」のことを知らなかったからではありません。
詩のなかに「ニセ」という言葉があると、とても無粋な気がしたのです。アカシアのニセモノってなに? と思われそうで。それに、日本の詩や短歌には「ニセアカシア」の花のことでも「アカシア」という言葉が多く使われています。
例えば、北原白秋の詩「この道」には「この道は いつか来た道/ああ そうだよ/あかしやの花が咲いてる」という一節がありますが、この「あかしや」はまさしく白い花を咲かせる「ニセアカシア」のことなのです。
白石の「雨」には「いつ白い藁座を敷いたのか」という一節もあるので、「アカシア」と訳しても「ニセアカシア」の花を思い浮かべるだろうとも考えました。

いま、アン・ドヒョンの詩を翻訳していますが、やはり「アカシア」が出てきます。これも「ニセアカシア」のことですが、「アカシア」とするか「ニセアカシア」とするか、あるいは植物学上の名前「ハリエンジュ」とするか、そろそろ初校のゲラが届く頃なのに、まだ悩み中。
詩のタイトルが「植物図鑑」なので「ハリエンジュ」としようか……。花の名前ひとつにもあれやこれや考え込んでしまいます。

ところで、3月8日は「国際女性デー」。ミモザ(アカシア)の花がシンボルとなっています。
ミモザの花言葉は「感謝」。イタリアでは女性に感謝を伝えるためにミモザを贈るのだとか。
ふわふわ丸く咲いた黄色いミモザを部屋に飾って、一足早く春を堪能するのはいかがでしょうか。

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発行:一般社団法人 K-BOOK振興会

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