【K-BOOK振興会だより】キム・ヨンスの新作短編集からクィア・フェミニストのアーティストによるエッセイ集まで今月も多彩

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
K-BOOK振興会便り  2024年10月号        http://k-book.org/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

◆◇今月のTOPIK◇◆

●フェア情報●
10月4日(金)~10月21日(月)
広島PARCO本館6F PARCO FACTORYで開催される全国の刺激的な出版社・書店から本が集合する期間限定イベント
「BOOK PARK CLUB(ブックパーククラブ)」内で【POP UP 韓国〜韓国のリトルプレスの世界〜】が展開されます。

●イベント情報●
10月23日(水):【チェッコリ/オンライン】
チェッコリ読書クラブ:テーマ本は『ピンポン』(パク・ミンギュ著、斎藤真理子訳)
モデレーター:「双子のライオン堂」の店主・竹田信弥
https://chekccori241023.peatix.com/

10月23日(水):【日本演出者協会事業のグループ/オンライン】見逃し配信あり
《国際演劇交流セミナー2024 韓国特集》
「韓国の芸術(演劇)教育を知ろう」
パネリスト:クォン・ジョンウォン
https://www.jda.jp/seminar-ws/international/19244.html

10月24日(木):【チェッコリ/会場+オンライン】
『韓国は日本をどう見ているか』刊行記念トークイベント 金暻和・林田真心子対談「日韓カルチャーとメディア・コミュニケーションの現在」
ゲスト:金暻和、林田真心子
https://chekccori241024.peatix.com/

◆◇日本語で読みたい韓国の本◇◆

小説 『あまりにも多くの夏が(너무나 많은 여름이)』
―――――――――――――――――――――――――――

●キム・ヨンスのベストセラー短編集

朗読会のために書かれた作品を収録したもので、表題作「あまりにも多くの夏が」をはじめ、20篇もの作品が収録されている。
キム・ヨンスという作家を知らなかった人が彼についてもっと知りたくなるような作品。
なぜなら読んだ人にしか分からない、理由のないやさしさがちりばめられているからである。国や人種、時代が違っても私たちには共通する悩みがある。
昨日よりも今日よりも、明日はもっとよくなりたい、人生を生きる意味や人生について。
いくつかの作品には「鶯谷駅、北海道」などの日本の地名や日本語、日本人が登場するので日本の読者にも親しみやすい。
また作品の長さが多様なので飽きることなく新たな気持ちでページをめくることができ、読書が苦手と感じる読者にもおすすめできるだろう。
本書の最後には朗読会で流していた音楽のプレイリストが掲載されており、音楽を聞きながら読書を楽しむことができる。

http://k-book.org/yomitai/240902/

--------------------

エッセイ 『エンディングまでゆっくりと(엔딩까지 천천히)』
―――――――――――――――――――――――――――

●「映画療法士」を自称する著者が、映画やドラマを紹介していく形式で綴られたエッセイ。

著者本人が人生の岐路に立ったとき、常に道標を示してくれたのが映画だったという。
そんな著者が悩みに合わせて作品を選び抜き、その作品の見どころを含んだ鋭い考察や、著者自身の経験も交えながら、
悩みを抱える読者それぞれが望むエンディングへ辿り着くよう、ヒントを与えてくれるエッセイ集。
人生という映画の主人公である私たちが“エンディングまでゆっくりと”歩いていくことを応援してくれる本である。
この本は、ズバリ答えや解決策を提示してくれるものではない。ただ、「物語には力がある」と信じる著者が、悩みに合わせてそっと映画を差し出してくれるのだが、
それが押し付けがましくなく、すっと心に沁み込んでくる。

http://k-book.org/yomitai/240909/
--------------------

絵本 『忘れていた勇気(잊었던 용기)』
―――――――――――――――――――――――――――

●失いかけた人間関係を取り戻す過程を描く絵本

文学ウェブマガジン『ビユ』に掲載された著者のエッセイを絵本の形にしたいという出版社の提案により誕生した1冊で、絵もすべて著者が手がけている。
長い冬休みが終わり、新学期を迎えたが、小学生の少女は仲が良かったはずの友達になぜかあいさつすることができず、2人の関係はぎくしゃくしてしまう。
「先に声をかけてくれたら」と期待する内に時は過ぎ、少女は友達に一通の手紙を書く決心をする。首を長くして返事を待つ彼女の元に届いた手紙には、
「先に手紙をくれてありがとう」「私のママがあなたはとっても勇気がある子だって言ってた」と書かれていた。
その手紙のやりとりをきっかけに、2人はまた仲の良い友達に戻っていく。
水彩絵の具を用い、季節の移ろいや少女の心情を躍動感あるタッチで色彩豊かに表現しているので、ページをめくるたび、吹き抜ける風やその温度、
次々と芽吹く草花のまぶしさ、少女が一人で歩く雨の日のにおいや音まで伝わってくるようだ。

http://k-book.org/yomitai/240924/
--------------------

エッセイ 『私ってなぜこんなに面白いんだろう(나는 왜 이렇게 웃긴가))』
―――――――――――――――――――――――――――

●クィア・フェミニストのアーティストによるエッセイ集

クィア・フェミニストのアーティストとして、また社会運動家として20年にわたり旺盛な活動を続けているイバンジハの2冊名のエッセイ集。
前作『となりのクィア イバンジハ』ではクィア当事者としての自身の人生を描き、韓国出版文化協会の「今年の青少年教養図書」にも選ばれるほど、
ジェンダーを2つだけに分けている社会にイシューを与えた。
今作ではクィア、フェミニスト、韓国人、アーティストとしての作者が社会とぶつかりながら生まれた話がイバンジハ特有の軽快な筆致でつづられている。
タイトル『私ってなぜこんなに面白いんだろう』は作者がただ面白くてユーモアにあふれた人だからではなく、優しそうな社会の中に潜んでいる差別について可笑しく、
そして鋭く問いを投げる作者であるこそ付けられる題名である。

http://k-book.org/yomitai/240930/

--------------------

◆◇日本語で読める韓国の本◇◆

『ADHDですけど、なにか?』(チョン・ジウム 著 / 鈴木沙織 訳 / KADOKAWA)
―――――――――――――――――――――――――――
ADHDと診断された著者チョン・ジウムさん。「どんな建物も築30年もすれば修繕が必要になる。齢30。こんな波瀾くらいどうってことない。そんな楽天家になった。」
との言葉が吐けるようになるまで、どんな風に過ごしてきたのだろうか? と思いながら読むと、
ここに綴られたメッセージは、誰にも通じる生き方を提示してくれているようでした。ストレートにジウムさんの心の声が響いてくるエッセイです。
翻訳者の鈴木沙織さんからメッセージを頂戴しました。
http://k-book.org/yomeru/240926/

『中国現代詩人文庫』1巻から5巻(韓永男、全京業ほか3名/著、柳春玉ほか/訳、川中子義勝ほか2名/監修、土曜美術社出版販売)
―――――――――――――――――――――――――――
韓国で出版された本の邦訳版ではないのですが、ぜひお手に取っていただきたい作品。著者も訳者もみな中国朝鮮族の方々です。
身近な自然を愛でる詩、生活する土地での苦楽の詩、遠い先祖の地に思いを馳せる詩など、詩人たちが中国朝鮮語で紡いだ詩は主題も素材も様々。
詩をとおして暮らしや文化を垣間見ることができます。
瀋陽を旅し、コリアタウンの西塔街に足を運んだこともある私は、第4巻『金昌永詩集』の連作詩「西塔」100篇を読んだときには、
朝鮮独特のゆるやかな屋根を模した建物や街並みが頭に浮かび、移民としての悲哀が切々と心に沁みいりました。
日本で詩作にも励んでいる柳春玉さんの訳にはリズムも余白も余韻もあり、母語ではない言語に詩を翻訳された偉業に頭が下がる思いです。
柳春玉さんからメッセージを頂戴しました。
http://k-book.org/yomeru/20240928/

◆◇ 韓国の出版・本屋事情 ◇◆

教保文庫、8月の月間ベストと注目の新刊(韓国小説)
―――――――――――――――――――――――――――
日本でも人気のキム・エランやチョン・ユジョンの新作長編小説が月末に相次いで刊行され早くもランクインした他、
建築家で作家のペク・ヒソンによる初の小説も刊行され話題を集めています。
http://k-book.org/publishing/20240912/

教保文庫、8月の月間ベストと注目の新刊(エッセイ)
―――――――――――――――――――――――――――
注目の新刊では、『여자 둘이 살고 있습니다(女ふたり、暮らしています。)』(清水知佐子訳、CCCメディアハウス、2021)の改訂増補版と、
その著者の一人であるキム・ハナの母、イ・オクソンのエッセイを紹介しました。
http://k-book.org/publishing/20240910/

◆◇8月のK-BOOKらじお◇◆

#113 韓国の家父長制を背景に、様々な関係性の女性たちの物語を描いた短編集-清田麻衣子さん(里山社) |わたし、これ担当しました
http://k-book.org/news/radio_113/

#114 平凡な男の失敗と再起の物語『TUBE』でソン・ピョンウォンワールドにハマる-髙橋由莉和さん(東山堂川徳店) |わたし、これ推してます
http://k-book.org/news/radio_114/

#115 生まれて初めて読んだ 韓国小説『アーモンド』 さりげなく私たちに 寄り添うフェミニズム小説 『屋上で会いましょう』など|わたし、これ読みました
http://k-book.org/news/radio_115/

#116 怖くて切なくてちょっぴりコミカルな 新感覚ファンタジーホラー小説-カン・バンファさん|わたし、これ訳しました
http://k-book.org/news/radio_116/
——————————————

韓国の本=K-BOOKを愛する皆さんに、日本で刊行された翻訳本の新刊情報やイベント情報、韓国現地からの情報、
そして読者の皆さんの声をご紹介するインターネットラジオ「K-BOOKらじお」は、Apple Podcast、Spotify、YouTubeで毎週金曜日 朝9時配信中!
Google Podcastでの配信もスタートしました。
ぜひお好みのプラットフォームで番組登録をお願いします。

Apple👉 https://apple.co/3PRb6VW
Spotify👉 https://spoti.fi/3SgTqEB
YouTube👉 https://www.youtube.com/playlist?list=PLBkX7a7_CVRiEx8w

__おしまいに____________________
韓国を代表する大河小説『土地』20巻がもうまもなく刊行されます。世界初の完訳だそうです。
『土地』がきっかけで、舞台となっている場所、統営、中国吉林省の龍井、ハルビン、ウラジオストク、ウスリースクまで旅をしました。
韓国文学の印象を大きく変えてくれた作品です。(運営委員:五十嵐真希)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
発行:一般社団法人 K-BOOK振興会

index



〒101-0051 千代田区神田神保町1-7-3三光堂ビル
TEL:03-5244-5427 FAX:03-5244-5428
mail:info@k-book.org
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━